10円様

ウエスト・サイド・ストーリーの10円様のレビュー・感想・評価

4.0
 私がこの映画を待ち侘びていた理由は、スピルバーグが創る「America」のミュージカルが観たかったからです。ただその想いだけでした。開始から1時間くらいしてイントロが流れた時とか鳥肌が立ちまくり。いや、本当に素晴らしかった…

 ロバートワイズとジェロームロビンスの「ウエストサイド物語」がアカデミー賞を獲ったのが1961年で今から半世紀以上前になります。その間ミュージカル映画は時代と共に変化していきました。ロック、ポップ、テクノ、ラップ等、時代が求める音楽で歌劇は作られ観客はそれに呼応します。
 この60年で多くのニューミュージカルが誕生し、今もなお進化している中での本作はそれとは逆に向かっています。曲や物語や設定に大胆なアレンジは加えず、懐古主義的なアプローチで作られていました。それじゃあ再映画化する必要あったの?なんても思いますが、観たくないですか?スピルバーグが構築する「ウエストサイド物語」を。

 私、スピルバーグは現代のロバートワイズって思うほどこの2人は似ていると思うんです。あくまでもエンターテイメントを重視した映画職人で、何撮らせてもソツがないし、作家の持つクセというものも感じない。映画初心者から玄人まで受け入れられる数少ない監督だと思います。するとやっぱり見比べてしまうわけですよ。
 感想としてはやっぱり歌唱方の進化やカメラワークから現代版を推してしまいます。衣装や舞台装置も色の使い方がとても上手く、色が状況の全てを物語るようでした。61年度版でままだ確立していなかったであろう映像技法もここでは簡単に観せてくれて、ミュージカルシーンそのものの躍動感というものは完全にこちらでした。
 しかしダンスシーンなんですが、確かにこちらの方が派手ではありましたがダンス自体のキレは61年版も負けていないんですよね。半世紀でダンス方も飛躍しているはずなのにもはや1960年の時点で確立したダンスジャンルなのだと思いました。これは当時の演者の凄さがうかがわれると共に、現代のダンサーがそれを再現出来たという感動も与えてくれました。
 本作、役者の人達みんな素晴らしかったですよ!肝心の主役の2人のダンスシーンがあまり無かったのには残念でしたが歌はめちゃくちゃ上手かったです。リタモレノはまだ歌えるという事にもビックリです。
 あんま主役が画面に出てこない気もしましたが、アニータが1番目立ってました。あと誰だ?リフ役のマイクファイストって。1番印象に残りました!

 61年の「ウエストサイド物語」は実は現代の視点から観るとあまり褒められた映画ではないんですよね。プエルトリコ系移民の中にプエルトリコ系役者がリタモレノしかいないのです。ジョージチャキリスはギリシャ系だし、マリア役のナタリーウッドに関しては完全に白人です。ブラックフェイスと呼ばれる方法で肌を褐色にしているんでよね。実際端役も何人プエルトリコ系がいたかは疑問に思う所です。まあ当時はこれが普通だったので、倫理協会やマイノリティからのバッシングは囁き程度だったのでしょう。これを現代にやったら大問題ですね。

 とは言え本作も調べるとやはりプエルトリコ系は少ないんです。レイチェルゼグラーはコロンビアとどこかのハーフ。アリアナデボーズはイタリアとアフリカ系プエルトリコのハーフ。デビッドアルバレスは分からないけど多分苗字からしてメキシコ系…と有色人種は使用しているものの一貫性が感じません。
これは日本人役に日系人使うのと何が違うのか。色が同じでも顔つきがまばらだったのには違和感が残りました。
ではジェッツにはユダヤ系は何人いるのか…と考えると面倒くさいので考えるのを止めました…
10円様

10円様