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あなたにふさわしいのohassyのレビュー・感想・評価

あなたにふさわしい(2018年製作の映画)
3.5
友人出演を鑑賞。

とある2組の夫婦が休暇で訪れた避暑地の別荘で繰り広げる愛憎劇であり、自分や相手との関わり方を見つめ直す物語。

おそらくほぼワンショットワンカットの長回しで撮影された本作は、やはり4人の俳優たちのアンサンブルで作り上げられた感じが強い。
個人的に美希の行動や心の移り変わりは簡単に理解できないけれど、他人の気持ちや行動の理由などというものは理解できないものだと思っていた方がいいわけで、そういう意味では逆に妙なリアリティがあるようにも思う。

途中で現れるカメラマン含め、男性陣はなんだかみんなファンタジーな印象だったのだけれど、一方でもうひとりの女性・多香子については、仕事に対しての姿勢などキャラクターがすごく理解できる気がする。
監督もパンフレットのインタビューでそう言っていて、もしかしたら最も現実的に描かれたキャラクターなのかな。
美希含めそれぞれが表現の役割を持ったキャラクターで、それぞれが物語を転がしていくために発言行動する中で、多香子はひとりその渦中で振り回され、眠り、結果つきものが抜けたようなリラックスを手に入れていたように思う。

本作はタイトルの通り、何かにとって「ふさわしい」とはどういうことか?を問う物語。
ふさわしい名前についてのエピソードは、僕も仕事柄言葉を作ることが多いので印象に残っていて、美希の夫・由則や多香子の仕事っぷりを見ていると、その言葉へのアプローチや振り回されぶりにはちょっと身の詰まる思いもある。
僕を含めたこういう人間はきっと、本作の通り心からの手紙を書くことが下手くそで、普段は言葉を操っているつもりでも、素人だと思っていた誰かの文章に全く手も足も出ないことが、結構よくある。
美希が夫にあてた手紙は、それまであーだこーだと言葉をこねくり回していた由則に対して、言葉の本質のようなものを突きつける。

観たひとそれぞれがいろんな感想を持つであろう作品だと思うけれど、僕が1番気になるのは由則と多香子のような、付き合っているわけではないが高いレベルで尊敬し合い、頼り合い、依存し合っている関係。
2人は仕事上のパートナーではあるが、ただの同僚や取引先ではない。
学生時代から切磋琢磨しながら協力し合ってきた、ただならぬ関係だ。
一方でいわゆる男女の関係はない(らしい)。 これは「男女の友情は成立するのか?」という問いだろうが、個人的に昔は成立しないと思っていたけれど最近は成立しそうだなと思いつつある。
だがそれは、妻や彼女までしっかりとその感覚が伝わるものだろうか?
朝家に帰り「友達と朝まで飲み歩いてた」と話したとして、相手が男か女かというのは、妻や彼女にとって大きな問題になりそうではないか?

どうなのさ?
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