たまこ

テッド・バンディのたまこのレビュー・感想・評価

テッド・バンディ(2019年製作の映画)
3.8
かの有名な連続殺人鬼テッド・バンディを、彼に魅了されていた人物たちの視点から描いた作品。

Filmarks主催の試写会にて。

三度の飯よりスプラッタ映画が好きな私は、彼の残虐な殺人方法に焦点を当てた物語を想像していた。
ところが実際のところ、この映画にはほとんど殺人シーンは出てこない。
それでも、最終的にはこれまでに見たどんなスプラッタ映画にも感じたことのない恐怖を覚えることになった。

だって、この世のどこに、優しくて賢いイケメンを史上最悪の殺人鬼と見抜ける人間がいる?

優しくて面白くて頼りがいのあるイケメンと恋に落ち、彼が殺人罪で起訴されてもマスコミがどれだけ騒ごうとも恋人を信じようとしたリズを、「馬鹿な女」「不幸な女」と一蹴することは私にはできないと思った。

それと同時に、今まで自分が信じてきた人たちももしや…という気にさせられる。

この映画は、それくらい見事なまでに個人の価値観を揺さぶってくる。

そして触れずにいられないのがザック・エフロンの演技力。ふとした表情が、何度となくネットや書籍で見たテッド・バンディそのもので震えた。『ジョーカー』のホアキンと同じくらいの衝撃。

脇役も良し。
極太眉毛のリリー・コリンズも、顔は子供のままに輪郭と体格が成長し過ぎたハーレイ・ジョエル・オスメントも光るが、裁判官を演じたジョン・マルコビッチの頭、じゃなくて貫禄の演技はピカイチ。原題でもある”Extremely Wicked, Shockingly Evil and Vile”は、バンディを表現するのに用いた彼の印象的なスピーチの一部。

徹頭徹尾良くできた作品。
テッド・バンディを知る人も知らない人も、己の人を見る目を試されること間違いなし。
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