シュンゴ

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのシュンゴのレビュー・感想・評価

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充足感と虚無感に満たされる3時間半
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観終わって帰って次の日起きて出社して無理矢理仕事に没頭するまでずっと精神の落ち着き所がなかった。興奮しているのか哀しいのか虚しいのか。
いつも映画をみていて、とりさらわれる事を願っているけど、これだけさらわれきった挙句部族の祭りと嵐の音の中に投げ込まれると普通に生活に支障がでる。
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スコセッシ映画に付き纏うある種の諦観は、登場人物の行動が苛烈になるほど際立っていくのだけど、キングという奥行きの描かれないビッグブラザーの支配のおかげで(せいで)その感覚はより具象化していく。
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何だったんだ、俺たちが200分以上追体験したデカプリオの顔した男は最初から最後までただの空っぽな人間だったのか?
人間は構造と言語の奴隷でしか無いのか?
という気持ち
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それでも、燃え上がる炎を見つめるアーネストの目の奥には何か枠組みを突き抜けていくものがあったはずだし、少なくとも、スクリーンを見つめる自分はそこから何かを見出そうとしていたことは確かであって、その態度は映画や芸術への個人的な信仰と言っていいものだと思う。
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信仰そのものに向き合ってきたスコセッシが晩年になってもこれだけの作品を創り上げている、という事実そのものがペシミスティックな気持ちをぶち抜いていく、と観終わって時間の経った今は思う。