シュンゴ

シン・仮面ライダーのシュンゴのレビュー・感想・評価

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)
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■仮面・嘘・パンツを脱ぐ

・脱ぐべきか、脱がざるべきか
庵野監督による、作品・作者評価軸としてよく「パンツを脱ぐ」という表現が用いられていた。
作者自身の内面、そのコアの部分を曝け出せているか、というのがその大意で、
例えば逆シャアにおける富野由悠季はパンツ脱いでフリチンで踊り回っており、紅の豚における宮崎駿は頑なに最後の一枚を脱いでいない、という塩梅らしい。
シンゴジ・シンエヴァ前までの庵野監督はその思想で自縄自縛の状態だったように思える。
旧エヴァや式日なんかを観てるとその屹立した(もしくは萎びた)イチモツを外気に晒すことが最大のテーマと化しており、
結果監督の精神は摩耗していくばかりで、エヴァQ後、おそらく何度目かの決壊に至る。


・仮面(ペルソナ)ライダー
自分は昭和平成令和問わず仮面ライダーに関しては門外漢なので、今回のシンカメが原典に対してどんな解釈をとっているのか、どれだけ同人的なのか、というのはわからない。
その上でこの映画を見ていると、どうも本郷猛やら一文字隼人やらでは無く、あくまで中心に据えてあるのはその「仮面」であるように見える。
VR的な使用や、相手の仮面を壊してこっちのを被せて攻略する等、仮面(ペルソナ)を 被る/被せる と言った行いに冒頭からラストに至るまで強い意図を感じる。
ある構造の中の立ち位置として、どの仮面を選択するか。そして、より大きな包摂力を持った仮面はどれなのか。アクションシーンの奥にあるのはその鍔迫り合い。


・心スッキリ嘘をつく
ショッカー首領の目的は最大多数の最大幸福では無く、深い絶望からの転化による人類救済。
終盤出てくる敵の目的は嘘が存在しないパンツ脱ぎっぱなしの世界。
両方とも、シン以前の庵野作品で肝となっていたような思想だが、今回ライダーはそれを否定する。
今の庵野監督にとっては、それが心スッキリするための生き方になったのだろうし、自分の核を否定しなくてもフィットするような嘘(仮面)をつけれるようになったのだろう。
シンエヴァの時はそのオトナ具合に少し寂しさを覚えたものだけど、今回はただただ清々しく思えた。
演出の振り切り具合に子供心が漲っていたからと思う。

柄がいっぱい入ったパンツを履いた姿を見せつけているような感じで、なんだか楽しかった。