みほみほ

幸せへのまわり道のみほみほのレビュー・感想・評価

幸せへのまわり道(2019年製作の映画)
4.6
🧸2021年81本目🧸
(初見→字幕、2回目→吹替)

近年のトム・ハンクス主演映画で一番響いた作品。こうした名作をまた、トム・ハンクスを主役に構えて観れる事が幸せ。

あくまで主人公はトム・ハンクスであるけれど、物語の軸として中心的な存在だったロイドの父親役が、クリス・クーパーだったのも最高でした。《トム・ハンクスもクリス・クーパーも、超が付くほど大好き。私を映画に惹き込んだのは、多くのトム・ハンクス作品のお陰なのです。》

Mr.ロジャース(フレッド・ロジャース)の事は映画を観るまで全く知らなかったけど、ぶっ飛んでるアメリカって皮肉めいたイメージをテレビ番組などで強く印象付けられてきた為、こんなに深みのある子供番組があった事にかなり驚きました。

現実にMr.ロジャースのような人が現れて、自分の生きてきた人生に潜む感情と向き合う事を優しく諭されたとしたら、自分ならきっと拒絶してしまいそう。だけど映画という存在だからこそ、観ているこちらも素直になれて、深く頷く事が出来る。このような映画の存在は、人の人生をも変えるパワーがあると改めて思う。

自分自身、自分が嫌になって人生を悲観する場面に見舞われるなんて事が日常茶飯事な人間だけど、この環境で育たなければ、今のこの人生の中にいる人達にも出逢えなかったわけだし、何より目の前にいる一番大切な存在とも出逢う運命にならなかったと思うと、この人生で良かったんだと思える事がある。今作を観ながら、そんな気持ちを思い出したし、心が浄化された気がした。

「愚行録」のような救いようもない絶望的と人間の浅ましさが描かれている作品を観てしまうと、感情と向き合ったり人生をリセットしたり事の過酷さを思い知らされるんだけど、かといって今作がそこまで夢に溢れ現実離れしているかと言われたら、そんな事もない。
Mr.ロジャースだって、自分の感情との向き合い方を模索し、実践しながら乗り越えているわけだし、それを沢山の人に届けようと裏では過酷に生きてきたのかもしれない。だからこそ浅い夢物語ではなく、自分の経験に基づいて編み出した怒りへの対処法を伝染させているように思える。

怒りと向き合う本作は、自分のみならず観て欲しいと思う人が周りに居るし、今の自分がこのタイミングで観れて本当に良かった。

終始じわじわ泣いていたし、Mr.ロジャースに乗り移ったトム・ハンクスの一言一句が感情を柔軟にしてくれて、心を洗ってくれた。沢山涙を流しながら、世界観がもたらす温かさに救われた。

ラストシーンのMr.ロジャースを観ていると、悲しさではなく安堵の気持ちに包まれた。彼だって綺麗事ではなく苦悩して生きているし、完璧な人間なんぞ存在しないんだよと訴えかけているようで、綺麗事と思ってしまう程心に強いブロックを張っている人に衝撃を与えるようなシーンにさえ思えた。

自分の考え方や感情の抑制方法を、子供のみならず大人にまで影響を与え、成長を促す事で彼もまた成長しながら、人生をうまくコントロールして生きている姿に、「あぁ…自分も我慢する事や健康的に発散する事を知って、落ち着かないとな…」と恥ずかしくなった。

多くの方に観て欲しい名作だと思うし、怒りの根底は恐れや恐怖という事に向き合って、この作品から誰かの人生が良いものに変化すれば良いなと強く感じた。自分の人生にも活かしたい教訓が多くて、心を洗われながら物語に没頭させてくれる名作でした。

Mr.ロジャースが与えたもの、それがこうして時を超えて映画になり、国を超えて人を動かすという事。映画のこういう部分が本当に大好きだし、観ている間だけでも心が暖かく幸せになれる。

地下鉄のシーンで鳥肌が立ったし、本物のMr.ロジャースの語りや歌も嬉しかった。トム・ハンクスもバッチリハマっていて、最高過ぎました。

昨日は結婚記念日だったので、新文芸坐で今作を観ようかと思っていましたが、これだけ泣き続けてしまうのだから、家で良かったと思いました。でもスクリーンで観たら、さらに持ってかれるだろうと思うと、行けば良かった…!とも思う。

素晴らしい映画でした。
みほみほ

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