えびとまと

お嬢ちゃんのえびとまとのレビュー・感想・評価

お嬢ちゃん(2018年製作の映画)
5.0

若いからこそ抱く世間と自分に対する苛立ち。若いからこそ持つ正しさ。変だと思ったことは変だと言う。怒るべきときはがっつり怒る。そうやって自分の意見をはっきりさせる。たとえ周りがなんと言おうと、自分の中に通った芯だけは曲げない。それができるのがみのりであって、自分も含めた世間一帯を諦観して、闘ってる。頭がおかしいと言われても。

おかしい。おかしいのはホントはどっちなんだか、答えは分かっているつもりだけど、それでも嫌に大人な自分が邪魔して、全ての体重を片側の気持ちだけに乗せることはできない。中途半端。みのりは、この中途半端さを思いっきり振り切ってくれる、ニューヒロイン。

みのりのあらゆる主張が、始終頷けた。それは今の自分がどこかウヨウヨしてて、輪郭がないから。大人の部類だけど、少なくとも、くだらない、と思える自分がいるのは確か。人生これから、なんて思えない自分がいるのは確か。どっちかに振り切れなくても、恥ずかしいと思ってても、まだ自分の正義が残ってるから。自分の優しさに気づける。みのりの根本で渦巻いてるものが、きっと優しさだろうから。

どのシーンも、基本的にどうでもいい話が真ん中にあるのに、画面から目が離せない。ずっとずっと観てられる。そうそう、こういう感じのバカ話してるよな、と同調できる。でもそれもまた、自分はすでにくだらなさの渦中にいる気もして、悔しくなる。でもその合間にみのりの苛立ちが挟まれてる。全部全部、くだらない。上映が開始して数分で救われた気がして、あぁいい映画だ、と息が漏れた。

劇中のみのりの感覚も、役者の萩原みのりも、若さを失っても忘れてはならない。これは、萩原みのり本人と、ふてくされた誰かの今が詰まってる映画。いつかきっと、また観る日が来るだろう。

もう一度みのりに、がつんと蹴り上げてもらうのだ。

二ノ宮監督、『枝葉のこと』観たいな。
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