えびとまと

ゴーストマスターのえびとまとのレビュー・感想・評価

ゴーストマスター(2018年製作の映画)
3.3

怖いっちゃあ怖いけど、それよりも目立つ違和感。コメディ寄りなのか、ほんとのところこれは大真面目にやっているのか、観ているあいだ揺さぶられる。とはいえ、その根本にはひっそりと、そしてどっしりと、映画に対する熱意、粘着力抜群の愛情がある。

けれど反面、その愛情の裏にある負の情が、主人公たちを恐怖のどん底に突き落とす要因にもなってはいるから、愛ばかりも語っていられない。才能がないのに映画を撮ることにしがみつくこと、企画が通らないのに書き上げた脚本、読まれない脚本、その現実を受け入れられず、目を背け続けること、脚光を浴びることなく、そうやって溜まっていく虚しさ。それらが主人公と夢の間で確かに介在し、その念は無意識にも脚本そのものにも乗り移っていた、ということが今作のストーリーの始まりでもあるわけで、単なる、映画って最高だぜ!というお気楽夢物語映画などではない。現場で助監督として辛い仕事をやりながらも、いつか自分も、とどうにかこうにか展望を保とうとしている男が、それでも俺は!と自分を犠牲にしてでもとことん貫く映画愛、愛を超えた狂気的な愛が蔓延する、病気的な恋愛ホラーアクション?な映画なのだ、と個人的には思った。

成海璃子さん、相変わらず、というのもおかしいけれど、とても存在感があって、キャラ的には地味な主人公を演じる三浦貴大さんといいコントラストを生んでいた。また彼女の作品を観てみたいと思えた。

愛情ってのは強まれば強まるほど、より解放的な自由が生まれるんじゃないかと、この作品を観てまたさらに表現活動の可能性、というのを考えた。
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