Masato

彼らは生きていた/ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールドのMasatoのレビュー・感想・評価

4.6

1917の真実

第一次世界大戦のイギリス軍兵士の記録映像を、現代の技術で現代映画さながらに復活させたドキュメンタリー

1917の予習、補完として併せて鑑賞することをオススメ。

1917もゲーム感覚で没入感を与えるタイプの戦争映画だったが、本作も、兵士の実際の体験がインタビューの形で事細かに語られるため、その場にいるような感覚になる。なので、前線へ送り込まれたときや、終戦したときの兵士の感覚にさながらなってしまう。恐ろしいほどに虚無感と絶望感と疲労感が押し寄せてくる。

前述した、退役軍人のインタビューが本当に凄い。兵士の遊戯や休暇、兵役勤務の内容、交友関係などなど、細かく体験を語ってくれる。1917で序盤に描かれた塹壕の道は、実は想像を絶するほど過酷で厳しい環境であり、その時の感想がもう嫌になる。地獄。

その後の突撃のシーンも恐ろしい。こんなにも命が容易く失われていたなんて。第一次世界大戦の西部戦線の恐ろしさは知っていたが、本作では知っている以上の恐ろしさを体感した。地獄という言葉がそのまま当てはまる状況。それでも、慣れてしまうのがもっと怖い。

こんな環境に17~19歳の若い人たちが行っていたなんて。ナショナリズムとプロパガンダは本当に恐ろしい。戦意高揚と夢・憧れを植え付ける洗脳行為。

ドイツ兵との交流も良かった。軍服を脱げば、ただの販売員や理容師。戦争は無価値だとお互いにわかっている。それなのに殺し合わなければならない。あまりにも酷い。戦火の馬でも同様なことが描かれていたが、本当のことだった。映像では笑い合うイギリス兵とドイツ兵の姿が泣ける。国民の本当の敵は国家だということ。

意気揚々と戦地へ送り込んだ国も家族も、いざ戦争が終われば一番過酷だった兵士たちを突き放す。差別され、仕事にありつけない日々。戦争が終わったのにも関わらず、まだ地獄は終わらない。戦争とは一体何だったのか。

こちらも祖父へと捧げる映画となっている。こういう事になってしまった世界には非難しつづけなければならないが、それに従って必死に国に忠誠を誓った兵士たちは尊敬しなければならない。

嗚呼苦しい。こんなことがあっても、第二次世界大戦に始まり、幾度となく世界中で戦争が起きた。恐ろしい。


余談
ロッテントマトを100点と書いてしまうあたりの広報かなんかの薄い知識。パーセンテージなんだけどね。内訳に点数式の表示はあるけど、それは10点満点方式だし、それだとトップ批評家の点数では9点強だしね。書くならちゃんと書いてほしい。
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