あんがすざろっく

Fukushima 50のあんがすざろっくのレビュー・感想・評価

Fukushima 50(2019年製作の映画)
4.2
劇場公開時から見たかった作品です。

2011年3月11日、太平洋沖を震源とした大地震が発生。
福島第一原子力発電所を、想定外規模の津波が襲う。
発生当時発電所に駐在していた職員や原発所長は最悪の事態を防ぐ為に奔走、文字通り命がけの原子炉制御を試みる。
混乱する現場、怒号が飛び交う発電所本社幹部や迷走する官邸との緊迫したやり取り。
事態は悪化する一方で、原子炉の炉心融解も目前の中、建屋の爆発が起きてしまう。


これが絵空事に思えないのは、我々が実際にこの目で一部始終をニュースで見ていたからでしょう。
巨大地震という自然災害の後を追うように襲ったのは、その地震をも凌駕する、更なる恐怖。


地震発生当時、自分は東京駅の地下にいて、震源地から遠く離れた地でも今まで感じたことのない揺れだったので、被災地の様子はきっと言葉では語り切れないものがあったと思います。

東京駅は電車も完全にストップしていたから、地下街は帰宅できない人で溢れ、みんな段ボールなどを下に敷いて座り込み、途方に暮れていました。
僕は実家が上野だったので、夜中に徒歩で1時間程かけて向かいましたが、沿道はとても夜中とは思えない人の波で、あの時間に車が渋滞で動けなくなっていたのは、今思い返しても異様な光景です。


作品は、原子炉と格闘した作業員達の姿がメインになっているので、地震の様子については最低限しか描かれていません。
未だ事故は収束したとは思っていないし、かつての日常の生活を送れていない方々が多くいる中で、この作品の方向性は本当に苦慮されたと思います。
なるべくまっさらな状態で鑑賞したかったんですが、至るところから漏れ伝わる否定的な評価。

作中の専門用語も、それが良いことなのか、悪いことなのか、その後の登場人物の表情で推測しないと分からない部分もありました。

でも僕は個人的に、見て良かったと思いました。
豪華キャストを揃えたことだって、それだけ多くの人に見てもらいたい、出来る限り入口を広くしたい、ということなんだと、僕は思っています。
ステレオタイプなのは、見る前から分かっていたことですし。

ベントが進む中、首相が現場を訪問し、一時ベントは中断。
それを聞いた首相は「何のために来たと思ってるんだ‼︎」と職員を一喝。
本当に首相がこんなこと言ったのかは分かりませんが、職員からしてみたら「何のために来たんですか?」と逆に聞き返したかったでしょう。
こういうところから見ると、少し政府に対する皮肉もあったのですかね。

この作品を見て、まだこれ以上の最悪な事態があったかも知れないこと、どれだけ原発の職員の方々の必死な努力があったか、改めて分かりました。
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