コタロヲ

影裏のコタロヲのレビュー・感想・評価

影裏(2020年製作の映画)
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映画館で鑑賞

色々な意味での“原作の難しさ”が、伝わる作品だったと思います。

「心を開く・許す」それは、ダンボールについたガムテープを剥がすのと同じであり、自傷的なものを持ち合わせている。
めくるガムテープに、バリバリとダンボールの一部が剥がれるように、心を開くときも傷つくことが伴う。
だから人は恐れてしまうが、そんな中でも「この人なら、、、」と、剥がし傷つく。そして、この自傷的な自己開示とも呼べるものに起因する“その人”を許せるのなら、その人こそ自分にとっての愛する人であると、この作品を見て感じました。

屍をも流しさったあの波と、それに伴い居なくなってゆく人々に、「人は生かし生かされている」と教えられた。日浅が言った「屍の上に立ってんだ俺たち」は、皮肉込めたうえでの、彼なりの「それは幸せなことだ」という表現だったのではないかと。
その循環の中に居れることの幸せと、生きていたという証。

知を得ることでの喪失と、不知でいることでの充足という得失の関係性によって保たれる繋がり。

表情の微々たる揺れから毛穴まで見えるほどの生々しい顔の連続は、そこにある何かを見せんとするような意図を感じました。
コタロヲ

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