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ジョジョ・ラビットのTakaCineのレビュー・感想・評価

ジョジョ・ラビット(2019年製作の映画)
4.5
【少年の世界】
少年の頃は遠い昔。
甘えん坊なのに強がったり、毎日、冒険をしたり走り回るのが大好きでした。女の子にドキドキして、ヒーローに憧れて…

主人公の少年、ジョジョ・ベッツラーはかつての自分みたい😁
(※こんなに可愛くはありませんでしたけどw)

軍服姿に憧れたり、007のように世界を飛び回ったり…またはスターウォーズのルークのように、自分には秘めた才能や使命があって、いずれは世界を救う!と本気で信じてました😅(はい、純粋な子供でしたw)

つまり、この映画の世界は(かつて自分も通過した)「少年の世界」なんですよ😌
はぁ~懐かしいなあ♪

〈ポップな味わい〉
大好きな『ガープの世界』(一風変わった寓話的な世界)と『まぼろしの市街戦』(戦争の馬鹿馬鹿しさを風刺した世界)を合わせた独特なトーンが魅力の映画。

ジョジョは「ヒトラーユーゲント(ヒトラー青少年団)」に憧れる10歳の少年。演じるローマン・グリフィン・デイビスがとても可愛くて、表情がクルクル変わって、感受性が豊かなんですね(映画初出演で、GG賞主演男優賞ノミネート!)。

当時の熱狂的なヒトラー信仰ぶりを、冒頭から実写映像に超有名なポップ曲を被せて描いていって、妙に軽快で楽しすぎる😁🎶

ここで既に気に入りました😆(笑)

何だか全体的にキッチュで、画面もカラフル(赤がアクセント)で、キャラクターが劇画チックで…戦争映画なのに、どこまでも明るく笑えて…メル・ブルックスのくどいコメディを観てるみたいでした(褒めてます♪)。

少年のイマジナリーフレンド(空想の友人)が「あの人」ってだけで、あざといけど爆笑してしまいます😆(監督自ら熱演!ちょっとやりすぎ!)

ただ笑わせるだけじゃなくて、当時のエグい啓蒙思想の怖さというか、偏見と嘘だらけの教育に素直に洗脳されていく少年たちの姿がマジで恐ろしい…

実情を知らない少年たちが、ナチスを「憧れの存在」として崇拝し、ユダヤ人を「駆除すべき存在」として蔑視します。

蔑視すべき証拠(ユダヤ人は下等な悪魔)のあまりの馬鹿馬鹿しさに呆れながら、こんな稚拙な思想で民族を抹殺しようとすることに驚愕😱💦酷すぎる…

誰もがナチスに傾倒する中、ジョジョの目を開かせる女性が2人います。

母親のロージー(スカーレット・ヨハンソン)と居候のエルサ(トーマシン・マッケンジー)です。

周りの意見に惑わされず、自分の心の目で愛情深く公平に捉える大切さを、この2人からジョジョは学びます。

ヨハンソンの男勝りで力強くてユーモアたっぷりで優しい母親ぶりが、最高に愛らしく凄く格好良かったですね😍💕好きな場面はたくさんありますが、ジョジョを前にして、一人二役を演じる場面は最高でした♪

マッケンジーは凄く聡明な女の子役で、年下のジョジョを簡単に言い負かしてしまいます。そこが可笑しかったですね😁でもこのボーイ・ミーツ・ガールな展開が、『戦場のピアニスト』と同じくジョジョの人間性に重大な影響を与えるんですね!

やっぱり男は女によって変わる!

そして、重大な人物がもう1人います。サム・ロックウェル演じるクレンツェンドルフ大尉です。もう何も言いません!癖の強い役柄がお得意のロックウェルの名人芸。今回も、苛つかせて笑わせて泣かせてくれます(何のこっちゃ?)😂最高、最高、最高かよ‼️ただ、もっと出て欲しかったなあ~

愛らしいジョジョ(友達のヨーキーも)、実力派キャストの共演、衣装も町並みも美術も音楽も素晴らしくて、これは観て良かったです😍✨✨

〈ビターな味わい〉
一見、ナチスやヒトラーを能天気なブラックコメディ風に描いている前半は、集中砲火される向きはありますが、監督が描きたかった部分は、むしろ後半の(人員不足で)「ヒトラーユーゲント」が戦場に駆り出される悲惨な現実だと思いました😢まだ幼い少年たちが銃や手榴弾を渡されて、敵や戦車に突っ込んでいく姿…(涙)

子供たちの尊い未来を、命を、狂った国の思想のために踏み潰してしまう狂気。これは過去のナチスの問題だけでなく、現代も民族紛争や宗教の対立でも続いていますよね。子供たちの純粋な気持ちを、戦争の犠牲に利用するなんて😭‼️ふざけんな~😠💢

監督の痛切な戦争批判を感じました。

「コメディは観客を寛大にし、メッセージを伝えやすくする」と監督の言葉。チャップリンの『独裁者』のようですね。

南カリフォルニア大学ショア財団と映画制作会社フォックス・サーチライト・ピクチャーズは、民族憎悪やヘイト、反ユダヤ主義や偏見に対する理解の一助として、本作をホロコースト教育の教材として利用することを決めたようです。

https://news.yahoo.co.jp/byline/satohitoshi/20200126-00160360/

敢えて批判覚悟で作った監督の勇気は、称賛されるべきものと思いました。
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