＜ジョジョを守る大人たち＞
実在したヒトラーユーゲントが舞台の反ナチ映画だが、徹底的に１０才の主人公視点で描くことで生まれる「可笑しさ」が見所。そんなコメディ仕様だからこそ出来る反ヘイトメッセージの質的拡張。
冒頭から「ビートルズとナチスを被らせる」という不謹慎スレスレな攻めっぷり。そして"I wanna hold you hand"の歌詞が、本作が少年の恋の始まりの話であることも宣言する素晴らしいオープニング。
母親、キャプテンK、エルサ。
ジョジョの内的世界が壊れないように、見守った彼らの優しさ。それが本作を上質なファンタジーたらしめていた。ジョジョのナチスへの憧憬を「否定せずに正す」スカヨハの凛とした佇まいの美。
そして一番優しいのが監督。
終盤に訪れる悲劇で、カメラが「写したもの」と「写さなかったもの」。そこから読み取れるジョジョへの深い愛情。「ヘイトの惨さから目を背けるな」そんな批判すら覚悟の上で、タイカワイティティはジョジョの大切なものを好奇の眼から守る。本作の矜持を象徴するような、その優しさに感涙。「総統」の姿で現れて、父殺しという通過儀礼まで経験させる彼こそジョジョの父代わり。
劇中でジョジョがエルサの彼氏に、
ジョジョ母が父親に、
それぞれ扮して（言いにくいけど）大事なことを伝えたように、この映画全体もまた「コメディというジャンル」に扮して伝えようとしている。決して「奇をてらう」わけでなく、そこまでしてでもやらねばという気概を感じた作品。
