ぴろ

新聞記者のぴろのネタバレレビュー・内容・結末

新聞記者(2019年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

【政治権力vs新聞記者 言論が萎縮し、権力が幅を利かせる時代 なお貫くジャーナリストとしての信念】

最近とある界隈で話題の『朝日新聞 政治部』を読了した。元朝日記者・鮫島浩による政治ノンフィクション。朝日が大バッシングを受けた2014年の吉田調書問題の裏側や、同社の官僚的な内部構造を元当事者が暴露する。

『朝日新聞 政治部』を読んだ後だと、映画『新聞記者』の内容の重みがグッと増す。本作は政治記者の主人公・吉岡が、巨大な国家権力の闇に立ち向かうサスペンス。作中では内閣情報調査室による言論監視の様子も描かれている。情報工作により誤報記者のレッテルを貼られ、大バッシングの末に自殺に追い込まれた吉岡の父が、吉田調書問題時の鮫島氏らと重なった。また、神崎は森友問題で自死した赤木俊夫さんを彷彿とさせる。

国や巨大組織が利権のためにあらゆる手段を使って真実を歪めることは、"現実にあり得る"のだ。そして、それに対抗するべき日本の既存メディアは、ネットの台頭や世の中の多様化によって衰退し、権力に萎縮せざるを得なくなっている。

しかし、そんな状況でも、民主主義の礎たるジャーナリズムを維持しようと活動している人々がいる。いや、むしろ会社の後ろ盾が弱くなっている状況だからこそ、職業ジャーナリストを超えた、そうした存在が現れるのかもしれない。
劇中の吉岡しかり、朝日を辞め独自のメディアを立ち上げた鮫島氏しかり、
権力に孤軍奮闘する人々の生き様や矜持は、闇夜の北極星のようにきらりと光っている。


【メモ】
○第43回日本アカデミー賞受賞
・最優秀作品賞
・最優秀主演男優賞(松坂桃李)
・最優秀主演女優賞(シム・ウンギョン)
・優秀監督賞(藤井道人)
・優秀脚本賞(詩森ろば、高石明彦、藤井道人)
・優秀編集賞(古川達馬)

○原案は東京新聞の望月衣塑子記者による同名著作。

○ 加計学園疑惑をモデルとしていることから、当時映画館などに「上映中止」を求める抗議活動が起きていたとか。
ぴろ

ぴろ