とむ

新聞記者のとむのレビュー・感想・評価

新聞記者(2019年製作の映画)
4.2
観終わって少し経ち、新宿の街を歩いている。
どうもおかしい。動悸が定まらない。

新宿ピカデリーの最上階からフロアを一つずつ降りて行くごとに、別の映画の上映から解放された観客たちによって世俗的な喧騒が少しずつ取り戻されていく。
外に出ると、更にその観客たちの声の上に被さるように一層騒がしくなる。
7月に入り、少し高くなった気温によって生み出された夜の新宿を走る生温い風が、下水や吐瀉物が入り混じった異臭を運んでは鼻腔を侵す。

わざとらしいくらいに明るく輝くネオン街で、この映画で描かれた「可能性≒現実」を鑑みる人間はどれだけいるだろう。
そう考えると、何故だか食道を酸で焼かれたような、ひりつくような痛みを感じた。


おそらく、
「多田さんが考えもなしにこんなことを指示するわけないだろ」
「政権の安定こそが国を守るということだ」
等といった数々の虫唾が走る台詞を聞いて、
僕にはどうしてもこれがただのフィクションとして捉えることができず、消化不良を起こしてしまったんだと思う。

とは言っても、いち政治に疎い若者の意見として聞き流してもらいたいのだが、
どこまでがリアルに起こっていることで、
どこまでが脚色して描かれたものなのかは、正直わからなかった。


ただ、万が一つにもこのような現実がこの国に蔓延しているのだとしたら、
僕はこの日本という国を心の底から軽蔑する。
とむ

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