日本初のドルビーシネマ作品。邦画とドルビーの相性の良さが理解できました。
重い作品テーマ。ぼそぼそ呟く台詞。薄暗いシーン。暗転から遠影の多用。
こういう邦画の弱点が、うまくドルビーと作用して強みになっていたと感じました。たぶん普通の劇場やレンタルで観たらただのTVドラマやなぁ、って感想になってしまうと思う。相棒感が出ちゃうよね。
何を言ってるのか聞き取るのがつらい、なんて事は一度もなく、俳優の方々の声がとてもクリアに聞こえました。とくにエンドロールの手嶌葵さんの歌声は絶品。ウィスパーボイスが目の前で歌ってくれてるみたいな臨場感。オルゴールの音色やロウソクの火を消す息の音など、小さい音がはっきりとした輪郭で聞こえる。
夜のシーンや暗い部屋での演技もきめ細やかに映されます。暗転すると本当に真っ暗になるので、場面転換が際立つ。あの部屋のシーンも誰が何をしてるかきちんと認識できる。
本作は神戸がロケ地でしたが、昔住んでいたことがあるので、神戸タワーや南京町など見慣れた風景がとても綺麗に投影されるのもなんだか嬉しい気持ちに。最後の神戸の遠影の長回しは本当に美しかった。
作品のテーマとしてはその名の通り、轢き逃げ。加害者の罪の意識と、被害者家族がどう失ってしまった人と向き合うかと、そして加害者家族が何を思うか。2時間ずっとヘレディタリーのあのシーンを観ているようでかなりしんどい。
本作にはもう一つ仕掛けが用意されている。水谷豊さんが監督、脚本、演出もされたとのことで「おやおや、妙ですねぇ…」なんて言いながら紅茶を淹れるシーンがあるかと思ったらそんなものはなかった。
そんな右京さんなら開始45分あたりで解けそうなテーマがもう一つ最後にあります。これがまたしんどい。いわゆるイヤミスになるのでしょうか。ミストや告白を観た時のような嫌悪感が…だからこそ最後の美しい神戸の景色に少しだけ救われました。
最近不穏な事故が毎日のように報道されています。被害者の方々を想うとニュースを見ることも出来なくなるくらい胸が詰まります。
くれぐれも時間には余裕をもち、絶対に安全運転を心がけたいと思います。
ドルビーの宣伝ついでに。
3回目のエンドゲーム鑑賞はドルビーシネマ3Dにて。IMAXとの違いなんかも少し追記したので、お時間ある方や、ドルビーシネマでの鑑賞を検討されている方は読んでいただけますと幸いです。