はまたに

行き止まりの世界に生まれてのはまたにのレビュー・感想・評価

4.0
冒頭、颯爽と滑るスケートボーディングの光景だけで、それが彼らの逃避となり救いになっていることがはっきりと理解させられる。それだけ美しく、強く惹きつけられる。

自分と仲間の毎日を何年もカメラに収め続けていたら、貧困がもたらす悪循環に絡め取られる青春や人生を映し出すドキュメンタリーになった。監督でもあるカメラ少年も、いつからかそのことに気がつき、 意図を持ってカメラを回すようになった。

BlackLivesMatterの抗議活動に乗じて略奪に走る一部のならず者をワイドショーで眺めがら、「そんなことやってから運動が理解されないんだよ」などとクーラーの当たる部屋でポテチ食いながらツイートかます(←ド偏見)ことがいかに能天気か、環境の負の連鎖に振り回される人生を目の当たりにしながらあらためて思う。

「ひどい環境に育ってもモラルを保てる者もいるではないか」は美談のスタンダード化と同じで効果的な言動ではないと思う。予算がなくても良いものが作れ大きな反響を呼んだ、というニュースに触れては「だからお前もそうしろよ」を押し付けられる理不尽大国日本の住人なら共感しやすい気もするけど、一方で過度に秩序を重んじる国の住人だからこそ「何があっても人を殴るなんて許されない」「あいつはクズ」で結論づけてしまう人がいるのかもしれない。

でも本作で描かれている根っこの部分は明らかに環境という逃れえぬ呪縛を映し出していると思う。と同時に、そこに抗う信念があることも(キアーの父親とか)、そこから立ち上がるなけなしの意気地があることも合わせて描かれている。それは監督自身がまだ若く、意志を持って動けている証で、これがしがらみにスポイルされきった者の視点であれば、もっと諦念や次の世代へ託すような描き方になってんじゃないか、とも思う。

ともあれ、彼らにはスケートボードというスポーツがあり、アートがあり、コミュニティがあり、人生があった。トリックの習得には勇気と集中が必要で、失敗すれば大怪我を負うこともある。またそれは、時に怒りに任せて叩き割られ、ただの板切れと化すこともある。しかし、時が過ぎればどうにかこうにか。走り出すこともできる。

そんなことを思いました。ちょっとまとまらんかったな。
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