醗酵人間

天気の子の醗酵人間のレビュー・感想・評価

天気の子(2019年製作の映画)
3.9
誰もが感情移入できる「装置」のような王道な設定。断片的にポエミーに語られるキャラクターの心情は、まさしくポツリポツリと降る雨のようで、僕らの心に浸透し、浸透しないは浸透しないで、勝手に浸水させてくる。エモいシーンの連続に君の心のダムは耐えられるだろうか!?

やっぱり新海誠作品。「君の名は」に引き続き、ヒロインはあの世とこの世を繋ぐ巫女。女性は違う世界に連れてってくれるシンボルとして描かれる。

少し前に公開した、海をモチーフにした夏のガールミーツボーイである「海獣の子供」とは対照的に、「天気の子」は空をモチーフにした梅雨明けのボーイミーツガールである。
祭りで選ぶ選択もこれまた対照的で素晴らしい。

東京ボーイを名乗る離島生まれの少年はやっぱりちょっとどこか狂っている。憧れと裏切りと、救いと懺悔に落ちていく。その中で、今ある世界が元々狂っていたのか?と投げかけるあたり、やっぱり中二的だがそれがいい。
何たって今起きてる異常気象やなんやらが、もしかしたら誰かがボーイミーツガールの末に選びとった選択なのだとしたら、それはちょっとロマンチックだし、少しはマシに思えると思うからだ。

「君の名は」だってそうだった。忘れてしまってるだけで、大切な誰かと結ばれてると思えば、世界は違って見える。あれはそう、彗星が降ってくる物語で、その点も海獣の子供と似ている。

新海誠は世界を少しマシに描く天才だと、改めて思う。背景だってそうだ。リアル描写を追求しながらも、光の表現は現実よりも誇張して、七色に輝かせて描いている。
どんなに中二的だろうと、その意思をここまでのハイクオリティなアニメで消化できる力に唯々感服した。

余談だが、エンドロールの中国人名前の多さに驚いた。スポンサーもつきまくりだし、新海誠は色々と怖いくらいすごい。
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