あい

天気の子のあいのレビュー・感想・評価

天気の子(2019年製作の映画)
3.2
愛の価値観を問われる映画。

個人的には、中盤から主人公にまっったく感情移入できなかった。こんなに置いてけぼりにされる感覚は久しぶりで、主人公が独り善がりなお子ちゃまにしか思えず、美しい映像にも気持ちが追いつかず。。

モヤモヤしていたけど、他の方の感想を見たり、君の名は。(こちらは素直に感情移入して感動できた)と違うポイントを自分なりに見つめ直したら、また違う見方ができて。

君の名は。は、ヒロイン救済=みんなの救済だから、主人公の行動に感情移入しやすかった。ただ、本作品では、ヒロイン救済=他者の幸せではない。だから、私のように感情移入できない人には、どうしても主人公が独善的で自分勝手に見える。

だけど、この映画の見方としては、多分それでいいんじゃないかな。
自分が愛するひとりのためなら、どんな犠牲を払っても構わないって価値観を、美しいと思う人も居る。
一方で、共感できない人も居る。
これは多分、そんな人それぞれが持つ愛の定義、価値観を問いかける映画なんだと思う。どちらが良い悪いではなく。

必ずしも、突き抜けた独善的な愛の礼賛だと思わなかったのは、須賀のキャラクターの存在が大きい。
主人公の家出の具体的な理由は、恐らく敢えて、最後まで明かされない。両親の描写も一切ない。主人公の幼くまっすぐな想いだけを善として捉えるなら、描かれる大人は、主人公を狭い世界に縛りつけようとする、よくある親の姿などでも良いはず。だけどそうはせず、子どもの気持ちにも共感し、大人としての事情に板挟みになりながらも、それでも何とか主人公の力になろうとする、大人なら感情移入せずには居られない須賀のキャラクターは、恐らくこの映画を観る多くの大人の気持ちを代弁している。だから彼の親切心が拒まれるシーンでは頭を抱えてしまうけれど、でも彼の存在は、圧倒的な愛を受け入れられなくても、それが悪ではないと思わせてくれる。

最大多数の最大幸福、合理的で経済的なみんなの幸せよりも、時として、愛するひとりの幸せこそが大切になる。
そんな身勝手だけれど愛に溢れた世界を、あなたは美しいと思うか?思わないか?
そういうシンプルな問いなのだと思う。

私は受け入れられないけれど、そこまで想えるひとに出会えたら幸せだよね、とは思う。
(って感想がまた、つまらん大人だけど…最初は私も童心を忘れてしまったのかなと思ったけど、私は主人公と同世代のときに観ても感情移入できたとは思えないから、これは世代の話ではない気がする)

という訳で、君の名は。ほどのカタルシスも、みんなが気持ちいいハッピーエンドもないけど、ただ君の居る世界が美しい!という、ある意味究極の愛の姿が描かれてるんじゃないかな。
そんな愛に、一生に一度でも巡り会えたら幸せ、なのかなぁ?って、自分の価値観を問い直させられる映画でした。

スコアはだいぶ辛いけど、今の私はこの価値観には共感できないなぁという気持ちに正直に。
賛否両論、好き嫌いがかなり別れる作品だと思うので、色んな人と感想語りたいな。
あい

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