あい

パラサイト 半地下の家族のあいのネタバレレビュー・内容・結末

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

鑑賞中はジェットコースター展開についていくのに精一杯で。
終わった後に改めて反芻しようとしたけど、感想が何一つ出てこない。。
虚無・・・。
この読後感は「ジョーカー」に似てると思ったけど、あの独特の退廃感や
自己陶酔がどうも苦手だったので、個人的にはこちらの方がすっと咀嚼できた。

以後、がっつりネタバレです。

印象的だったシーンは2つ。
ひとつめは、クライマックスで引き金になる、裕福な家庭の父親が
鼻をしかめるシーン。
結局、悪気のない無意識の差別が一番堪えるんだよな…
っていうのが凝縮されたシーンだった。
この映画には、絶対的な悪者は登場しない、と思う。
生きるのに精一杯か、自分の暮らし以外にひどく無関心かのどちらか。
あの父親も、決して絶対悪ではなく、「臭い」に人一倍敏感なだけ。
ただ、あのとき弱者を助けようともせず、ふと見せた鼻をつまむ仕草は、主人公の父にとってはまさに自分に対してであり、彼を含む、
下流の人々ー貧困層すべてに対する屈辱だったのだと思う。
特別憎悪していた訳ではないのに、あのとき衝動的な行動を起こしてしまったことを「わかる」と感じさせてしまうあの描写、すごいと思った。。

この無意識の差別については、主人公がバイト紹介の恩があるはずの
友達のことを裏切って、何の迷いもなく娘と恋仲になっていた点にも
同じ構図がある気がする。
自分と同じ良い大学に通う上流階級の人種ならともかく、
「こいつなら彼女と恋愛するなんてありえないだろう」
という悪気のない見下しを主人公も感じていたからこそ、それを裏切った結果に優越感を感じているようにも見えた。
(立ちションへの制止や「大学に入ったら正式に付き合う」発言など
 友人の言動を真似したようなものも多く、屈折した憧れも感じる)

ふたつめは、元家政婦が秘密を明かした後、最初は懇願していたものの、
主人公家族も自分たちと同類だとわかってから、態度が一変するところ。
権力者にはすり寄るが、支配できる対象からは搾取しようとする、
人間の普遍的で浅ましい所が端的に描かれており、コメディタッチながらも暗い気持ちになった。

見ていて悲しくなったのは、「無計画が一番」というシーン。
苦境に居ても、諦めることに慣れ思考停止してしまえば、それが一番楽。
事情があるとはいえ地下から出たいとも思わず、寄生して生きようとする
元家政婦の夫からも同じものを感じた。

私は普段から韓国エンタメが好きなので韓国社会にも関心があるが、
韓国では若者の貧困が深刻で、結婚・出産や家を持つこと、正規雇用などを諦めた「三放世代」「五放世代」なんて悲しい言葉があると聞く。
このあたりの描写はそういった時代への警鐘なのかなぁと思ったり・・・
思考停止が一番危険だよね。
だからといって努力が報われるような単純な社会でもない訳だけど・・・

「万引き家族」は見ていないものの、「ジョーカー」しかり、
この映画しかり、格差を描いた映画が続々と登場していて。
ここ最近、投資や不動産の勉強をしていても、
「このシステム、時代の流れじゃ富はどんどん集中していくばかり」
って危機感が募る。
持てる者はさらに豊かになり、貧しいものはどんどん貧しくなっていく。
こんなに格差が広がって、この先何十年も、百年先も資本主義は機能していくのか。どう生きていくべきなのか。

この映画自体は決して説教じみた内容ではないけれど。
そんな大きなテーマを考えさせられる今日この頃。

冒頭では虚無、何一つ言葉が出ないとか言いながら、こんなにつらつらと
語ってしまったので、考えさせられる良い映画なんだろうなと思います。
(雑なまとめ)

下水描写・終盤の暴力描写がしんどいけど、色んな考察を見てもう1回観たい気もする・・・。
あい

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