岩嵜修平

王国(あるいはその家について)の岩嵜修平のレビュー・感想・評価

3.6
冒頭の衝撃的な事実が語られる取調シーンの後は「ホン読み」の繰り返しが独特の撮影と編集で映されるだけなので、途中まで呆気に取られてしまうが、作り手の意図が垣間見えると、ゾクっとさせられる。物語として演じられる役と役者自身の接近。殺人者になる瞬間。

繰り返し同じセリフが発せられる(役者自身も演出家の指示が入らない内は演技の形を変えない)のだが、一つとして同じシーンは無く、時系列としては行ったり来たりする。通常の映画の見方(聞き方)だと、同じシーンが繰り返されるので、しつこいとも感じてしまうが、見え方を変わるとスリリングに。

山中瑶子監督とのトーク付の回で見たが、他にも金子由里奈監督や濱口竜介監督、岡田利規さんなどゲストの並びが興味深く、大森時生さんの高評価なども含めると、2019年の作品が、むしろ2023年の今、連日満席なのも納得。ホラージャンルを中心に、フィクションのフィクション性への懐疑の流れの中にも。
岩嵜修平

岩嵜修平