わたがし

ヤッターマンのわたがしのレビュー・感想・評価

ヤッターマン(2008年製作の映画)
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 久しぶりに通しで観た。何回観ても三池崇史ベスト映画。三池崇史の邦画への諦めと悪ノリ、商業映画職人としてのまとめ方、手の抜き方の巧さが2時間弱に凝縮されてる。ヤッターマン好きが満足するのはもちろん、ノリで観た人も無難に楽しめる、なのに意味わからんほど悪趣味で狂ってる奇跡の映画。
 この「つまらない話です」「役者の演技が大袈裟です」「過剰なぐらい説明します」「来週もまた観てね(似たような映画しか作りません)」が全部自虐ジョークとして落ちてる感じが好きすぎる。しかもそれを日活ビックバジェットでやってるという。三池崇史本人のオールタイムベストは『スターシップ・トゥルーパーズ』らしいけど、それにとても近しいものを感じる。こんな神経で商業映画撮ってる人が当時「日本映画界で最も忙しい」とか言われてたの希望しか感じないんだよな
 観返すと明らかに適当に撮ってるだろ的ツッコミ待ちな瞬間がたくさんあってずっと爆笑してしまう。べったり感動的な音楽クドクド使いまわす(感動的じゃない変なシーンも思考停止みたいに流すというユーモアの前振り)、エキストラの棒読み、つまらない台詞に上乗せされる更につまらない台詞(「2号さんじゃなくて2号ね」「子供はわからなくていいんだよ」)などずっと面白い
 小ネタもたくさん好き。イカタゴサク出動の噴射でバカみたいな勢いで吹き飛ばされるCGエキストラ、ヤッターキング飛行中に追突するUFO、バージンローダーがオッパイミサイル発射時に乳首が勃起するところなど。こんなくだらないことをいい大人たちが何億もかけて描いてると思うと豊かすぎて涙がでるね
 あとこれは昔からずっと思うことだけど、巨大ロボ戦が普通にアツい。リアリティ重視でほとんど動かないゴジラよりツルツルCGで漫画みたいにガンガン動く巨大ロボのほうがスペクタクルがある。しかも終盤のイカタゴサクとヤッターキング戦なんか飛行戦(ここだけザコ会話ドラマから一転、割と本気のアクションカット割になる)でこんなもの邦画で観れるのかよという気分になるし、全ロボ戦シーン共通でパシリムと違って戦場に巻き込まれる人間(ヤッターマンら)の地上の視点が常にあるから「ロボがデカいこと」を忘れない。名画だなこれはもう
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