Ricola

家族ゲームのRicolaのレビュー・感想・評価

家族ゲーム(1983年製作の映画)
3.9
冒頭から放たれる異様さに、早速ゾワッとする。

家族とは本来最も身近なコミュニティであるはずなのに、この作品の沼田家の人々は、皆家族といることに居心地が悪く感じていそうである。


そんな沼田一家の、一見外からは見えない異常さに、ガンガン斬り込んでいく家庭教師の吉本(松田優作)が、一番まともであるように思えてくる。

食べ物を食べる音、お茶を飲む音、シャー芯を出す音など、音が通常より大きく気味悪く聞こえる。
特に液体を一気に飲む吉本。音がゴッキュゴッキュ響き渡る、その緊張感が気持ち悪い。

「先生のお気に入り」という映画のところにラインをひく。
その音も異様にキュッと鳴る。

校庭の俯瞰ショット、家でのダイニングルームでの正面ショットの多用など、平行に撮られた構図が多い。
それによって舞台のように見えたり、全体的な無機質さを強調するような効果を生み出しているようだ。
また特に、家族の食事のときの横並びのときに、その正面の構図がより活きる。

兄と弟の学校での授業の様子を交互に映すことで比較するわけだが、どちらも「普通」ではないことがわかる。
兄弟のキャラクターの違いも、ここらでよくわかる。

電子レンジの音で、ボクシングのコングの音を再現するのかわいい。
屋上で慎一を鍛える吉本であるが、天体観測をしようと望遠鏡を抱える人(兄か)の視線を感じると、ピタッと二人とも動きを止める。
こっぱずかしさからなのか何なのか…。何ともシュールで気になる場面である。

吉本の起こした「反乱」のシーンはかなり衝撃的である。
じわじわと侵食し、暴走する。
しかしそれに気が付かない両親。
どちらも異常であるとしか言いようがない。

ラストまでとことん皮肉に落とし込み、ブレない異常さなどの、徹底ぶりが最高だった。
特徴的な音の用い方、個のキャラクターの強さ、徹底的な構図など、変わったタイプの作品ではあるが、個人的に好みであった。
Ricola

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