タカ

無垢なる証人のタカのレビュー・感想・評価

無垢なる証人(2019年製作の映画)
4.6
「あなたはいい人ですか?」

自分が言われたらどうなるんだろうか。
きっとスノみたいに言葉に詰まるんだろうな〜
ホントに絶妙な間とリアクションだ。

あぁ素晴らしい!こんな見事な映画なかなかない!
感動の人間ドラマはもちろんのこと、作り込まれた裁判シーン、事件の全貌、全て引っくるめてハンパじゃない映画。
もうね、最後は泣くしかない。
オッサンだけど一筋くらい良いでしょ。涙流しても。

いいこと、いい人というキーワードが全編に鏤められている。
ジウの友人であるシネの言葉
スノの父の手紙
人権派弁護士だった過去とかつての仲間
ジウの母が放つ第一審後の言葉
イ検事のクロス
これほどまで登場人物全員に無駄なく役割を持たせた上に響くシーンを作るとはとんでもない。
複合的に張り巡らされたメッセージが最後のジウのセリフと行動へと帰結していく。
そりゃ〜感動する。

裁判シーンは紛れもない法廷サスペンス
弁論合戦は淀みない攻防
証拠映像の提示など常に状況が変化していく。
最後の決め手はジウの証言
証人に立つ覚悟は並々ならない決意
自分が陪審員だったらどう感じるのだろう?
この映画を観る前だったら確実に信用できない証言だと切り捨てていただろう。
無知の知
自分がいかに無知で自閉症について理解しようとしてなかったのか突きつけられる。
人を理解しようとする気持ちが一番大事

見える世界、聞こえる世界がちがうのは当たり前
人間はみんな違うのだから。
それは個性であって、それを捨ててしまうとその人ではなくなる。
自分の世界を理解して欲しい。
それは皆が思うこと。
でも、ジウは自分から歩み寄る。
表情の勉強・練習をして健常者の世界に入ろうとする。
端から理解を諦める健常者、必死に歩み寄ろうと努力する障害を持った方々。
果たしてどちらがあるべき姿なのだろう。

「おじさんも私を〇〇するんですか?」
この子にそんなことを言わせてはダメだ!
でも、スノの立場だったら依頼人のためにそうせざるを得ないかもしれない。
それぞれの立場を思うと胸を締め付けられる。

素晴らしい映画。
この上映館の数、上映回数であることがもったいなさすぎる。
ホントにたくさんの人に観てほしい。
迷ったらまず観てください。
きっと映画として楽しめますし、色んなことを考えます。

感じる世界が繋がれば、気持ちは通じ合う。
いい人ってなんだろう?
誰かにとってのいい人。
それは、その人を一番に理解している人だ。


<最後に小話>
劇中で日本アニメ「ぼのぼの」が登場する。
ぼのぼのがスクリーンデビューしてることでまず興奮する!
世界進出してるのね。
でも何よりも内容がリンクしてることに驚く。
おそらく、シマリスくんとアライグマくんの喧嘩をぼのぼのが仲裁しているだろう内容なんだけど、ジウが置かれる状況と瓜二つ。
事件を目撃して「やめて!」と叫ぶジウ。
「もうやめて〜」と仲裁するぼのぼの。
こんな細かなところもこだわってるのか。
ちょっと鳥肌ものだよ。
タカ

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