あんへる

劇場版 Fate/stay night Heaven's Feel Ⅲ.spring songのあんへるのレビュー・感想・評価

4.8
まずは感謝を。

この時期に、これほど高品質な作品を提供してくれた制作陣には本当に頭が下がる。

“この世全ての悪”みたいなウイルスのおかげで3月の公開が延期になり、気付けばもう8月ですよ…

せっかく桜咲く季節に公開設定してあれこれプロモーションしてきたってのに、完全にぶち壊し…もう不運としか言いようがない。
結果的に紫陽花も通り越して、今や向日葵の季節ですがな()

個人的には来年の春まででも全然待てたが、やはり早いタイミングで観賞できる分には素直に嬉しい。だが複雑だ。。




⚠ここからは本作のネタバレ、またはそれに準ずる内容が含まれている可能性があるので、これから観賞予定のある方はたぶん読まない方がいいっす。っていう一応の警告⚠

(無駄に長文です。暇な人だけ付き合って頂ければ結構です)






率直な感想としては、
満足度はすこぶる高い。けど、単体の作品としての粗がちょっと無視できない。

当然自分は原作ファンだし、このルートを劇場アニメとして映像化しただけで十分に凄いことだってのは理解してるつもり。
実際劇場で観る価値は十二分にある作品だと思う。
でも、手放しで大絶賛出来ないってのが正直なところ。
それと同時に、どうしようもなく自分って偏屈だなと思ってしまう。


まず、作画やら何やらってのは最早言うまでもないです。
このあたりは文句の付けようがない。

このufotableの安心感たるや。
バトルシーンとか凄まじいクオリティでしょ。
2章のバーサーカーVSオルタ戦もとんでもない迫力だったが、今作はそれを当然のように超えてくる。
はっきり言ってこれ以上は自分の語彙力が追い付かない。

正直、この時点で本作は大傑作と言ってもいいレベル。
細かい事は度外視で、純粋なアニメーションとしての完成度、熱量は群を抜いてる。
凄い時代になったもんだ。
映像的な観点で、アニメ好きなら観て決して後悔はしない。
観れば分かる。いやマジで。



ただね、どうしても気になってしまった。
ちょっと説明、描写不足が目立つ気がするのは私だけでしょうか…?

trueendベースって時点である程度懸念はしてた。
改変無しと考えて、これ逆算して2時間でいけるのか…?と、

実際ほぼ改変無し。
そして、やはり後半のダイジェスト感は否めない…

このルートって原作では最長のルートなんです。とにかく長い。
第1や第2ルートと比べて、体感で倍以上のテキスト量があった気もする。(その背景にはお蔵入りになったイリヤルートの要素が組込まれてるって理由も)

当然原作のあの膨大な情報量自体をそっくりそのまま映像作品に変換できる訳がないことくらい分かってる。
そんなの何時間あっても足りない。
そもそも読み物(ビジュアルノベル)とアニメって根本的に構造が異なる。
ただトレースしただけじゃ作品にならない。
結局アニメとして再構築した上で、もう一度物語に説得力を持たせなきゃならないからね。
その時点でこの作品を作り上げるのがどれ程キツいことかってのもある程度想像できる。
その上での話。

これ、単純にテンポが良いだけと言えなくもない気もするが、個人的には若干違和感を覚えた。

行動や展開、心理描写の理由付けとして、この情報量だけで果たしてどれだけ伝わるのか?
勿論それは原作ファンにではなく、あくまで初見の人に向けて。
そう考えた時、アニメから入った人には初めから道筋が存在してないようにも感じた。

確かに細かい事は掘り下げず、あくまで表面的にストーリーを追って楽しむのも有りだと思うし、実際それでも普通に楽しめちゃうのが本作の凄い所だと思う。

でもこの作品、このルートの本質、肝ってもっと深い所にあると思うんです。
そこを認識しないのは非常に勿体無い。
“Fate”、“UBW”の二つのルートでそれぞれ描かれたテーマ、そこから、ある一つの明確な答えを提示したのがこの“HF”ルート
「Fate/stay night」における種明かし的な要素が強い、いわば〈裏側〉の物語なんですよね。

士郎や桜を初め、人物(主にマスター側)の人間性がより色濃く現れてるのがこのルートだと思う。

欲を言えばそこの部分をより丁寧に余韻を持って描写してほしかったっていう、原作厨的な面倒くさい要望です。w

こんなこと言うだけ野暮だが、
まぁ早い話が、結局は尺が足りてないんですよね。
正直もしも4章構成だったなら…
って思わずにはいられない。


でもそれと同時に、限られた尺の中でストーリーの破綻も無く、このルートをこれだけ高品質な作品に仕上げる須藤監督の手腕は見事と言わざるを得ない。
やはり、只者ではないなと。•̀.̫•́✧キリッ

これは相当の原作理解度と並外れた原作愛が無ければ決して成し得ない業である。
私には分かる!!←

安直な改変はせず、忠実かつ要所をおさえた見所の配置、、、うーん、唸ってしまう。
正直脱帽です。元々原作の大ファンってのは知ってたが、
須藤友徳、やっぱあんたはわかってる。

これ一歩間違えばあの劇場版UBWの二の舞、いやそれ以上に目も当てられないスーパーダイジェストムービーになってた可能性だってある。
原作組に配慮しつつ、現状限られた条件下で映像化としての最適解を弾き出してくれた。
同じ一Fate並びに型月ファンとして、勝手に畏敬の念を抱かせて頂きます。

橙子さんの後ろ姿、美綴弟のカメオ出演、こういった細かいが嬉しい演出もしっかりファン心をくすぐってくれる。

あっ、ちなみに僕は「未来福音」の時からそう思ってましたよ〜♪w←



でも個人的な最大の見所としては、やはりアクションシーンになってしまう。
だって劇場でナインライブズ見れただけで感動して泣きそうになったもんw

そして、何と言ってもこのルート屈指の見せ場、ライダーVSオルタの宝具の撃ち合い。
【ベルレフォーン&ローアイアスVSエクスカリバー・モルガン】

何度も言うようだけど熱量が凄まじい。
ぬるぬるとかスピード感とか、最早そんな単語じゃ表現できない。
撮影技術やエフェクト、SE、声優の演技力etc.…様々な要素がそれぞれ一級品であり、且つ背景に重厚なドラマがあり、それらが調和して初めてこの芸術的なレベルの美しさが表現できるのだろう。
もうただただ見惚れるしかない。
原作の名場面を想像を絶するハイクオリティな映像で体感できて昇天しかけた。
ほんと、生きてててよかった。

欲を言えば、もっと深堀りしてほしかった場面は山程ある。
士郎がセイバーにアゾット剣を突き立てるシーンとかね、、、、
言い出せば本当にきりがないが、normalendもbadendも映像化して欲しい場面が無数にあるのがこのルート。

でも本作のラストは確実にtrueでありながらどことなくnormalendの様なテイストも感じる。
幸せと言い、罪科を胸に、二人で踏み出した一歩は何処か哀愁が漂うような…
ハッピーエンドだが、そんな独自のエンディングのようにも思える。

ただ、いつかOVAでも円盤の特典でもいいんで、スパークスライナーハイの映像化オナシャス!



さて、
散々好き勝手ほざいてきたけど、このままじゃ(愛ゆえに)永遠に終わりそうにないのでここらで纏めます。

とか言いつつここで昔話←
高校時代、とある理由で部活を1年の時早々に退部し、バイトもせずに暇を持て余していた頃だった。
そんな時、友人からある2本のPCゲーム(エロゲ)を貸してもらった。
「月姫」と「Fate/stay night」というソフトだった。
忘れもしない、それが邂逅だった。
(※『なに高校生が18禁ゲームやってんだよ』的な至極真っ当なツッコミはスルーさせて頂きます。)

当然エロゲなんてものは初プレイ。
当時はエロゲ?ナニソレ?オイシイノ??状態。
最初はAVみたいなもん?ただ単にエロいゲームでしょ?くらいの感覚でプレイし始めた。

衝撃を受けた。
何度も号泣した。
そしてエロゲという概念がわからなくなった。
《Fateは文学》って言葉があるが、まさにその通りなんだろう。
正直文学が何たるか、芸術が何ぞやなんてのは自分には未だによくわからん。
ただ、単純に読み物として心から素晴らしいと思った。美しいと感じた。

以降は完全にこの世界観の虜になった。
Fateも月姫も、一つ一つのルートをプレイする度に感動し、熱狂し、時に精神を蝕まれ…これでもかってくらい感情を揺さぶられた。
その後もhollow、歌月十夜、メルブラ、まほよ…と今や完全に型月信者にw

あの時出逢えて本当に良かった。
そしてずっと好きでいれて良かった。
この作品を観た今だからこそ、改めてそう思える。
それを思い出補正と言えばそうなのかもしれない、それでも感慨深い。
他の人の目にはどう映るのか知らないが、少なくとも自分の感情は当時と同じで全く色褪せてない。


ここでセイバーさん、ちょっと名言借ります、


『Fate―――貴方を、愛している』


ほんとこれ。

いつかラストエピソードも映像化されるといいなぁ。。。

順番的にあるとしたら次はhollowかなぁ?
でもあれは相当難しそう。

個人的に、Fateは取り敢えず全ルート映像化を果たしたので、これで一区切りでいいと思ってる。
少なくとも、もうこれ以上派生作品はいらない。

ufotableさん、須藤監督、次は「月姫」ですかね?w
自分、遠野家ルートが映像化されるまでは意地でも死なないっすよ♪


でもやっぱり、この作品は桜の季節に観なければならない。
そういう意味では、まだ自分の中で完結していない。
来年の春、リバイバル上映待ってます!!







蛇足
観賞後、こんな会話が聞こえた。

『あれなんで最後に(桜が)全裸になるかなーww』
『無駄なエロじゃね?www』

チッチッチッ、
そいつは少ーしばかり違うぜ、お嬢さん。(誰)
あの赤縦縞のピチピチ黒ワンピ、実はあれ、ただの影なんだぜ。
黒桜はアヴェンジャー(アンリマユ)との契約の影響で影を身に纏ってるだけ。
士郎がルールブレイカーで契約を断ち切った時点で影が消滅する。そして全裸…

つまり何が言いたいかって?
そう、桜は最初から何も着てなかったのさ!
衛宮邸を襲撃した時も、アインツベルンの城でセンパイを待ちながら悶々としてた時も、地下で姉妹ゲンカ(殺し合い)してた時も…
ぜーんぶ、(実質)全裸だったんだぜ!!

そう考えると興奮、、、しない…?←(着地点を見失った)



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追記
2021/4.6
再鑑賞の為スコア修正

ビデオマスター版(特別上映)劇場鑑賞

一年越しの決着を付けてきた。

最高の瞬間の連続だった。
やはり桜咲き誇る春に観る事で真価を発揮する作品なのだろう。

ナインライヴズ、オルタとライダーの宝具の撃ち合いはやはり何度観てもシビれあがる。

Fateファンの心理を汲んだ、小粋なリベンジ企画を催してくれたアニプレさん、並びに全国の各公開劇場には最大級の賛辞と感謝を贈りたい。
本当にありがとうございました。

本当の意味でやっと終止符を打てた感覚だ。
帰り道、夜桜の景色が目に染みたのは言うまでもない。
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