代表作の「ワルツ・フォー・デビー」の所為か、リリカル、センチメンタルなピアニストとしてのビル・エヴァンスの評価や人気は定まっている様に思えるけれど、この人は実にジャズのインタープレイに魂も身体も捧げたマッドなアーティストだったといつも思うのです。それこそ、トレーンやバードの様に。その感慨に誤りはなかった。彼の演奏を聴くといつもヒリヒリする。刃の上を綱渡りする様な。
ドキュメンタリーとしては王道のつくりで、登場エピソードや構成には真新しさは無く、ネガティブに言えば、凡庸です。
若干、製作から時間が経っている所為もあると思いますが、もう少し楽理的な分析や、現役バリバリのミュージシャンの談話を絡めて、多角的なドキュメンタリーを作る事も出来たんじゃ無いかなぁ、という物足りなさを感じてしまいました。
それでも、ポール・モチアンの語るスコット・ラファロとのエピソードをはじめ、当人たちの口から語られる貴重な証言の数々はやはり興味深く。
ビル・エヴァンスの教科書、入門編としてはこういう作品もあって良いとは思います。