KOUSAKA

シノニムズのKOUSAKAのレビュー・感想・評価

シノニムズ(2019年製作の映画)
3.8
2021年2月28日、ユーロスペース。宮崎大祐監督トークショー付き上映にて鑑賞。

主人公のヨアヴが祖国イスラエルというアイデンティティをかなぐり捨てて、新天地パリで新しい自分を見つけ出す(生み出す)ためにもがき続けるサマを力のある筆致で描き切っていて、非常に生々しいエネルギーが迸りまくっている力作でした。

ただ鑑賞直後、自分のリテラシーレベルでこの映画の良さを整理することはなかなか難しかったんですが、宮崎大祐監督のトークショーが非常に中身が濃く、この作品が言わんとしていることを的確に解説して下さったので、大変有難かったです。

印象に残ったのは下記3点。

・「権威」や「体制」のようなカタチを壊そうとしている主人公が、イキりまくってもがき苦しんだ結果、また「カタチ」の中に入れて欲しいと切望してしまう、そんな人間の(情けなくもあり愛おしくもある)本質のようなものを描いている。

・「言葉」を捨てようとした主人公が、結果的に別の「言葉」に絡めとられていく。そもそも人間は「言葉」から逃れることが出来ない生き物であるという悲哀。

・何かに対して「ダメだ」「反対だ」と外側から言うのは簡単。その問題提起を内面化して自分ごととして捉えていくことが大事であり、その困難さや壁に正面からぶち当たっていく(勇敢でもあり無様でもある)姿を描き切っているところがこの作品の魅力である。

この解説のおかげで、ちょっと面倒くさいヤツにも見えたヨアヴのイキりまくってもがきまくるサマが美しくも見えたし、それこそ究極に面倒くさく見えたラストシーンも、ガラッと印象が変わりました。

もう1回最初から見たい‼️
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