ぬーたん

在りし日の歌のぬーたんのレビュー・感想・評価

在りし日の歌(2019年製作の映画)
4.4
185分という長尺にリタイアしそうな気もしたが、そんなことは杞憂だった。オヤツ好きの私がオヤツも忘れて観入ったよ。元々中国映画とは相性がいい。チョイスがたまたま良かったのかもしれないが。『山の郵便配達』『海洋天堂』といった地味なものから『最愛の子』には☆4.8付けてたわ(忘れてた、自分でもビックリ)何というか、中国の家族を描いた作品は日本の昭和30年代辺りの時代の貧しい田舎を描いているようなそんな親近感がある。そして老若男女に安心して勧められるような、素朴で教科書に載りそうなストーリー。エロもグロもなく時はゆったりと流れる、韓国映画とは対極を成すようなのんびりとした作品が多い。
主役はごく普通の感じでその辺に居そうなオッサンだ。その妻と息子。息子を亡くしたところから物語は始まるが、時を行ったり来たりする。時を跨ぐシーンを繋ぐため、最初はいつか分からず混乱する。こういう今や当たり前になった手法を取る必要があったかということは疑問であるが、少なくても3時間超えの映画を飽きずに興味深く見せる、という点においては成功だろう。順番に流すには地味過ぎるストーリー、家族と友人たちだから。
そのオッサンを演じたワン・ジンチュン。実にいい。ソン・ガンホを薄めたような雰囲気。何処にでも居るお父さんだ。
妻役やもう一つの家族の夫婦なども皆熱演している。
中国の”一人っ子政策”が提唱された1980年代にどういうことが実際に起きたのか、を目の当りにする。家族の別れ、悲しみ。しかしそこに居る仲間たちはみな善良でそれは救いだ。故郷を離れ、また再会をする。それはドキュメンタリーのように『あの人に会いたい』とかありそうなテレビのように感動的で、でもお涙頂戴的なわざとらしさがない。そこまでを長い時間で丁寧に描いたことで、この家族に完全に感情移入し、自分のことのように感じたからだろう。
中国映画の特徴の一つだが、料理と食べるシーンが多い。主食の肉まんの皮だけ(花巻っていうのかな?蒸しパン?)が大きくてホカホカでその温かさが伝わって来る。それは家庭の、母の温かさだなあ。おかずは炒め物が多い。開けっ放しの家で、ハエが飛んでいるのを手で払いながらで、開放的な、貧しい庶民の暮らしである。水はコップでなく、大きなホーローのミルクパン位の大きな器で飲んでいる。少し錆びててふたつき。お茶の代わりに白湯。水餃子の差し入れ、中身はういきょうだって。どんな味だろう?お弁当まで蒸しパン!箸でつまんで冷えたのを。
どこにでも居る市井の人々を描くのが上手い。
ラストはしっかりと全てを見せて観ているこちらもすっきり、ほっこり。観客に委ねたり思わせぶりはない。
色々あったよねえ。でも生きてて良かったね。そんな当たり前の感想だけど、しみじみ感じたのだ。”生きる””がむしゃらに生きる”そんなことを描く原点のような映画。素晴らしい。今の時代に他国ではこんな映画、作れない。(検閲厳しい中国だからこそ、かも)
あ、蛍の光が中国では友情の歌詞らしい。こればかり流れるから耳に付いて離れない!しかし蛍の光って卒業式の歌と思って来たが、いつの間にか閉店ソングになっちゃったねえ!
※おやつは観終わってから。六花亭の2月の期間限定おやつ、玄冬を。アサリ入りのマカロニグラタンをパイで包んだもの。トースターでパリッと焼いてアップルティーと。おやつと言うより軽食だね。美味い!買い溜めしよう。
※夕飯は珍しくパン。昨日は久々に飲みに行った旦那(帰宅は9時だったけど)の為に軽く。フランスパン、ベーコンエッグ、カラフルサラダ、トマトスープ。イチゴのデザートで。朝ごはんか!
ぬーたん

ぬーたん