むっしゅたいやき

The Illumination(英題)のむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

The Illumination(英題)(1973年製作の映画)
4.5
クシシュトフ・ザヌーシ監督作品。
今回は一人の科学者が、人生の意義を探ると云う内容です。

これも素晴らしい作品でした。
青年期に起こる挫折、迷い、身近な人に起こる死や婚姻、誕生。
これ等を直視し、時には専攻の選択から敷衍して隠棲まで考えながらも生きる一人の科学者の惑いを、91分という短尺の中で濃密に描ききっています。

またその描き方にも特徴があり、静謐で俯瞰的、モンタージュを駆使した死の描写からバストショットを多用した迷いの表現、疾走感溢れる喜びの表現と、その折々に合わせた描き方をしている為、観る者への訴求力が非常に強い作品でした。

主人公が窓から吹き込んで来る雪片を、掌で受け止め握るシーンが秀逸です。
『イルミネーションとは―。啓蒙。中世哲学のひとつの概念で、悟りの瞬間精神が理性の推論を経ずに直接真実を見ている状態』。
冒頭のこの一節を鑑賞後まで噛み締めさせられます。
地味で本邦では扱いも小さな作品ですが、私にとってはいつまでも記憶に残したい傑作でした。
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