ろ

ロボコップ ディレクターズ・カット版のろのレビュー・感想・評価

5.0

ちょうど一年前、MONDO映画ポスター展へ行った。
シャイニングのタイプライター、エクソシストのパズズ像、鳥の桟橋。あの場面がポスターになるのかとオタク心をくすぐられるデザインばかり。中でも「ロボコップ」は二人のデザイナーがそれぞれ異なるデザインで作っていて、やっぱり人気なんだなと思った。
そしてついに今年満を持して鑑賞。
ヒドゥンもロボコップもSFだしまぁ観てみるかと軽いノリでチョイスしたら、まさかのヒドゥンと同い年の映画だと知り、じわじわテンションが上がった。

警察が民営化された近未来の犯罪都市デトロイト。
新たな都市建設に向け、24時間働き続けられる警察”ロボコップ”が開発される。
しかし殉職した警官の遺体で作られたロボコップは次第に生前の記憶を取り戻し・・・

デニスホッパーやルドガーハウアー、エドハリスのような憂いのある甘い瞳に、彼らと同じ頬のこけ方のピーターウェラー。まるで拳銃自殺するみたいにこめかみにドリルを押し当て、ヘルメットを脱ぎ捨てる。つるッとしたコンピュータ部分の後頭部と青白い素顔はハッとするほど美しい。

治安維持のために開発されたロボットが大暴走。ロックオンした社員に向けてこれでもかと銃弾をぶち込む残虐描写に、おおお~となりながらポテトサラダを頬張る。そしてクラレンス一味にいたぶられながらジワジワと殺されていくマーフィのなんと痛々しいこと。弾で右手を引きちぎられ、腕をもがれ、最後は額に一発ズドン。
そこからカメラは暗転し、蛍光グリーンの照準とコンピュータ画面のようなテロップが表示され、眺めていると自分までサイボーグとして蘇ったような夢見心地になる。

商店を営むじいちゃんばあちゃんを助け、強姦を撃退。ガソリンスタンドで火だるまになりかけながら、こどもたちに「真面目にやれよ」とエールを送るロボコップ。
そんな彼が記憶を辿り、妻子とともに過ごした家を訪ねる場面が切ない。
息子と一緒にアニメを観たソファに、今は白い布が掛けられている。キッチンで撮った家族写真はほこりを被り、各部屋に設置された小型のテレビからはセールスマンの謳い文句が響いている。

虎のような唸り声で威嚇しながらミサイルを乱射するロボット、そして逃げ惑う瀕死のロボコップ。非常階段まで逃げ切ったところで振り返ると、ロボットは初めての階段に戸惑い、なかなか一歩が踏み出せないでいる。やがてそのまま転げ落ちるとまるで小さな子どものようにワンワン泣く。夏の路上に転がる蝉やベランダでひっくりこけたカメムシのように手足をばたつかせながら泣き続ける。自力で起き上がれない大きな戦闘ロボットがなんだか不憫で、それを横目にとぼとぼと階段を降りるロボコップの哀愁がたまらない。

工場の廃液タンクにトラックごと突っ込み、どろどろに溶けるクラレンスのお仲間。でろでろにふやけた体で命を乞い、そしてあっさり轢き殺され、ボスの乗る車のフロントガラスに血しぶきが飛ぶ。アップで映し出される造形がなんともグロテスクで、80年代のムードを存分に楽しんだ。

( ..)φ

治安ロボットの動きも最高だけど、ロボコップの歩き方がなんとも言えない味わい。特に廃工場の汚水を歩く様がもうめちゃくちゃに不格好で愛おしい。
幕切れもスカッと潔く、エンドロールの最後の最後まで余韻に浸った。
ろ