rage30

五億円のじんせいのrage30のネタバレレビュー・内容・結末

五億円のじんせい(2019年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

5億円を稼ごうとする高校生の話。

主人公は5億円もの募金によって、命を助けられた高校生。
表面上は優等生な振る舞いをしているものの、その裏では、周囲の善意が重圧になって苦しんでいると。
まずは、この斬新な設定が面白かったですね。
普通の人間であっても、生きるのに2億円掛かるらしいので、主人公程ではないにしろ、「自分に2億円の価値があるのか?」「生涯で2億円も稼げるのか?」と考えさせられました。

そして、SNS上での煽りから5億円を稼ぐ事に決めた主人公は、家を出て1人でお金を稼ぎ始めます。
要は、無垢な少年が大人社会を冒険する話なわけですが、主人公の出会う大人や仕事がアンダーグラウンドなものばかりで、展開に意外性があるのも面白い部分。

本作と近しい作品として、『37セカンズ』を想起したりもしました。
あの作品も、抑圧された主人公がアンダーグラウンドな世界に触れて成長を果たす話でしたが、本作もまた新しい世界・価値観を知ることで、同時に新しい自分を知る、ビルドゥングスロマンとなっています。
自身の愛されキャラを疎ましく思ってた主人公が、その性質をポジティブに受け入れる姿には成長を感じ取れる事でしょう。

個人的に印象に残ったのは、序盤に登場するホームレスのおじさん。
彼が言う、“得”についての話…つまり、「お金には換算出来ない価値もある」という考えは、この映画の1つの回答だなと思っていて。
お金や数字でもって、なんでも計られてしまう様に感じてしまうけど、決して、そんな事はない。

主人公がこの旅を通して得た経験は、お金に換算出来るものではないし、もっと言えば、主人公のドキュメンタリーを見て、感動したり、元気を貰った人もいる事でしょう。
もしかしたら、それは5億円を稼ぐ事よりも、難しくて、意味がある事なのかもしれない。
映画のラストにある、主人公と出合った人達との笑顔の写真を見て、「お金が全てじゃないな」と思わずにはいられませんでした。

人が悩む時というのは、1つの観念に縛られている時だと思うし、そんな時こそ、こういう映画を見て、新しい視点や思考を取り入れる事がリフレッシュになるのかもしれません。
高校生に限らず、不安や悩みを抱えた多くの人にオススメしたい作品です。
rage30

rage30