リミナ

ラストナイト・イン・ソーホーのリミナのレビュー・感想・評価

3.8
ロンドンを舞台に過去と現在、夢と現実が交錯し訪れる恐怖。

ホラー作品として単に怖いだけでなく、ミスリード要素を鏤めつつどんでん返しもある縦軸の物語も楽しめる。

エドガー・ライト監督の過去作『ベイビードライバー』では、アクションへの音ハメが印象的だった音楽面。
本作では、日常から突然恐怖が訪れる瞬間を明るい曲調からの劇伴から不穏なものへのシームレスに切り替わりで演出。時にはその明るい曲調ですら映像とのギャップにより、まるで不協和音のような居心地の悪さを感じさせる。さらに場面によってはわざとノイズやリバーブを掛け物語への没入感を高めたりと全体を通して音楽への拘りを窺える。
ラストシークエンスでは、劇中で一度原曲も流れた『恋のダウンタウン』がリミックスVer.として再登場。主人公自身が身をもって体験した60年代の闇から目を背けず未来へ進む決意の表れ。

映像面も夢パートでは鏡に映る像はサンディでなく主人公だったり、ダンスシーンも1カットで人物が入れ替わったりと驚かされるシーンも多々。
恐怖の現場である主人公が住む一室も、ビビットなネオンの色合いや音楽で全く見え方が変わる。

個人的にホラーは苦手なジャンルだが、本作はそれ以上に楽しめる要素があったので観られた。
過去の亡霊もそうだけど、何より都会が怖ぇ...。
リミナ

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