社会のダストダス

最強殺し屋伝説国岡 完全版の社会のダストダスのレビュー・感想・評価

3.9
阪元「あの人はなんで殺されるんですか?」
国岡「知らないです」

阪元監督の新作『グリーンバレット』を前に、未見だったこちらを鑑賞。これは想像以上の面白さだった。殺し屋密着モキュメンタリ―、しかも日本が舞台って一体どういう発想で生まれたのか。

『ベイビーわるきゅーれ』を観たとき、この人のノリなら日本版の『キックアス』とか作れそうだなと思ったけど、まさかのヒットガールが登場。モキュメンタリ―の中での話とは言え、現実にそんな軽いノリで殺し屋になる人がいるとは。

2018年、映画監督の阪元は新作映画のシナリオ制作のために、“関西殺し屋協会”に取材を申し込む。紹介を受けたフリーの殺し屋、国岡昌幸(23)に密着取材を行った阪元が見たのは、一般人と変わらない日常のなか、淡々と仕事をこなす青年の姿だった。

これが関西最強の殺し屋!?と疑いたくなるほどの緩さ。スーパーでの会計で財布を出す時にもろ銃のホルダー見えてるし、テープでぐるぐる巻きにした長物の銃カバンに入れて移動している姿も隠しきれてなくて笑う、職質されたら一巻の終わりではないか。

ライフルでの狙撃の仕事のお仕事中、周りで遊ぶ子供たちの無邪気な笑い声を拾ってるのが気になって仕方なかったし、業務連絡に関しての愚痴を言い始めたかと思えばいきなりターゲットをズドン!ズドン!って始末して悠長に帰り支度をする流れが凄く好き。「たべますw?」じゃねえよ!

『ベイビーわるきゅーれ』の製作のために阪元監督が殺し屋を密着取材しているという設定らしく、そう考えると国岡さんの私生活の緩さがあちらにも反映されているように見える気がする、というかそのまんま。

特筆すべきは殺し屋稼業の知られざる実態…よりも国岡さんの食レポの上手さだろう、凄く伝わる。エンドロール後のおまけのセンスも爆笑した、こういう作品作る監督さんが順当に予算増やして、順当に面白い作品を撮って欲しい。