大野

ミッドサマーの大野のレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
3.7
※すまん、超長いです。

かなり練られた作品ではあるのですが、
オススメ出来るかというと微妙。

どうにもテンポが悪く、
仕込みが難しすぎる上、
メッセージ性がイマイチでした。

かなり理解した今でも、
露光による浮わついた演出で、
最後まで引きずられた印象の方が強いです。

(露光上げときゃ、
 なんでも幻想的で惹かれるんですよね。
 写真のフィルターと一緒。)

今作で目を惹いたピークは、
老人の飛び降り&撲殺シーンで、

そこからは要点こそ多いのですが、
間伸びが酷く、
尺潰しに付き合わされている気分でした。

一番デカいネタバレから書きますが、

ダニーの家族が亡くなったのは、
自殺ではなく、
おそらくペレが介入させた村人に、
殺された可能性が高いです。

冒頭で映されていたイラストが、
ストーリーの全容を表しており、

(左から右にいくに連れ、
 死の冬から繁栄の夏となっており、

 イラストが左右に割れて、
 冬の描写から始まっています。)

このイラストには、
骸骨が数体描かれているのですが、

家族を殺して、
繋がりを絶っているようだったり、
村人らと踊っていたりします。

序盤でペレが、
女王の写真を見せているのも伏線で、

後半、ダニーが女王になるのは、
村側の仕込みです。

ダンスバトルで、
すんなりトップになるって、
怪しいと思いませんでした??

近親交配で血が濃くなるのを避けるために、
外部から人を呼ぶと言っていましたが、
それはクリスだけではないということです。

(ダンスでグルグル回ってた中心の緑の棒は、
 メイポールと呼ばれる、男性器を表した物で、
 
 冒頭のイラストでは、
 メイポールを女性器に挿れるかのような、
 描写がされているのですが、
 
 その女性器の場所は、
 最後の食卓で、
 ダニーが座っていた場所です。)

つまり、
ペレのターゲットにされたダニーは、
策略によって心に穴を開けられ、
それをペレと村人らがカモるという、

完全なマッチポンプだった、
というのが事の顛末です。

(最後、ペレが誉められていた点、
 ジョシュが、
 儀式を知っていた素振り等からするに、

 ペレが、
 「まだ儀式が実在するけど見たい?」
 って、ジョシュの好奇心をくすぐって、
 
 マークには、
 「女の子抱き放題よ」
 って、実際は共同部屋なのに、
 それは伝えずその気にさせ、

 断れない空気を作った上で、
 受け身のクリスを囲い、

 弱さを見せたくないダニーには、
 共感や同情で反発を煽り、

 結果無事に、生贄セットの出来上がり。

 酒場でペレがクリスに、
 「スウェーデン女抱き放題だぞ」
 と言っていたことから、
 
 おそらく、
 クリスが外部からの種馬化というのも、
 元から織り込み済みだったという事。

 つまりマヤの動向も惚れたとかではなく、
 全て策略の上。

 序盤、マヤが1人鏡を見て、
 決意を固めるようなシーンの後、
 クリスを遠目に見ているが、
 恋をしているような目ではなく、

 小屋でのセックス中も、
 伸ばす手の先がクリスではなく、
 周囲の女性に向いている点からして、
 その線が濃厚。)


改めて予告を観ると、本当に酷いな。
明らかにミスリード狙ってきてる。
詐欺方面の。
ここまで違う映画も久しぶりだわ。


ルーン文字の要素は細かすぎるので、
主要な所をざっくりいうと、

食卓の形は毎回、
展開に沿った意味の文字の形、

黄色三角建物の中の文字は、
神オーディンにまつわる文字、

(そこから冒頭イラスト冬髑髏の黒鳥は、
 オーディンの情報収集カラスの、
 フギンとムニンと解る)

それぞれの衣装や、
ベットの側の壁画の文字も、
その人に沿った意味の文字だったりする。

(衣装は最初全員真っ白なのが、
 話が進むにつれ、
 文字や刺繍が増えていきます。)


9という数字がよく出てくるのは、
北欧神話にとって重要な数字なことから。

(18歳、36歳、54歳、72歳 
 全て9の倍数であり、

 10の位と1の位を足しても9になる。
 72歳 7+2= 9

 タイトルのスペルも9文字 etc…)


作中には、対称的表現がいくつかあり、

崖の碑文?には、
Rのようなルーン文字

ペレがダニーに送った絵には、
鏡文字となったRのようなルーン文字

飛び降りる老人らは、
飲む→グラスを捧げあう
⇄ ダニー達は、捧げあう→飲む

生きていく者と死んでいく者は、
対照的な表現がされている模様。

(フッハッの呼吸もハッフッかと思いきや、
 そこは変わらず。笑)


干されていたタオルのイラスト?は、
媚薬の作り方で、
マヤがクリスに仕掛ける全容となるのですが、

クリスよ、
なぜ君の飲み物だけ明らかに赤いのに、
飲んじゃった?

陰毛入ってた直後だぞ?
嫌な予感しないのか?

(そもそも陰毛&性器から出た血で、
 なぜ媚薬になるのか謎だが。。
 
 なんなら陰毛失敗してるし、
 飲み物で薬漬けにされて、
 結局最後は、謎の煙吸引でゴリ押しやん。

 血は熱しても凝固するので、
 少なくとも白煙にはならない。)


飛び降り儀式の “アテストゥーパ” とは、
北欧で紀元前に行われていたとされる、
年寄りの身投げ儀式。

家庭を支援できない老人などに、
行われていたそうで、
日本でいえば姨捨山みたいなものかと。

白夜の間は、天候も穏やかだったことから、
その間に死んだものは苦しまない、
などの言い伝えもあったらしい。


途中で消えたサイモンは、
なぜか惨殺され吊るされていましたが、

あれは北欧伝説上の処刑方法の一つで、
肋骨を切り取って、肺を体外に広げることから、
“血のワシ” と呼ばれる処刑らしい。

(寝る建物の壁画にも、
 かなり大きく描いてありました。
 趣味悪すぎ。笑)

おそらくですが、
村から逃げようとして殺されているので、
村人らはそもそも、

外部から来た人間を、
帰す気はなかったということです。

冒頭イラストの左から3番目では、
ペレが笛を携え、ダニーらを連れているところから、
ハーメルンの笛吹きもモチーフかと思うので、
そもそも誰も、帰す気がなかった説で確定かと。

並んでる順番的には、
マークから嵌められていったっぽいかな。

(コニーが村からいなくなった際、
 電話で合流したと伝えられていたが、
 スマホは圏外だったので、
 唯一、明らかな嘘と気付けたかもな点)

おそらくダニー達が逃げて、
コニー達が残ってたら、
コニーが女王だったんだろうね。

(最後の生贄に、
 コニーらを連れてきたイングが志願しており、
 名誉な事のように言われていたが、
 ペレは志願せずニコニコしていることから、

 入村前のドラッグ中にペレが言っていた、
 「全てが機械的に役割を果たす」という言葉の通り、

 おそらく村の規則で、
 使える血を連れてこれなかった場合は、
 生贄になる、など、
 機械的に選出されてる。)


ジョシュが、
盗撮で撲殺されるシーンも凝っており、

なんだマークかよ!と安心したのも束の間、
下半身露出してる!?Why!?

種明かしとしては、
マークの皮を被った村人が襲ってきてたっていう。

(皮を被った村人が瞬きをするのですが、
 皮側のまぶたが動いてないんですよね。

 ガスマスク被って息してるみたいな、
 シュコーって息の音もしています。)

マークは陰毛事件の後、
女性と何処かへ消えていましたが、

エチエチな展開どころではなく、
木に小便した罪で、皮を削がれてたっていう。

ホルガに到着した際、
「子供たちが遊んでいるあれは何?」
という質問に、
「アホの皮を剥いでる」と答えており、

最後、台車で運ばれるマークの頭には、
ピエロの帽子がつけられ、
全身が布で見えなくなっています。

(軽々持ち上げられており、
 袖などから見えている通り、中身は枯れ草)

下半身露出?の由来は、

戦死した敵の下半身を剥いで履くことで、
“ネクロパンツ“ と呼ばれる、
富を呼ぶマジックアイテムになるとされており、
壁画にも描かれていました。

なので下半身も、露出しているのではなく、
正しくは、履いているっていう。

(いや、露出は露出か。笑)

マークと消えていった女性が、
後のシーンに登場しており、
顔に怪我をしていたので、
多少は抵抗したっぽい。

(ジョシュが振り返った時、
 実は一瞬、木槌男が映っていたり、

 倒されてからの、
 いびきのようなあの呻き声は、
 脳震盪を起こした人特有の声らしい。)


テーマとして、宗教的共感により、
不安をなくすってのはまだ良いとしても、

性行為にまで共感して、
アンアン言ってるのはやりすぎ。。笑
よくあんなの受ける役者がいるもんだ。。

(モザイク処理も雑すぎ。
 隠すのか隠さないのかどっちかにしろw)

クリスらのアンアン言ってる建物の側で、
ダニーを降ろしたのも確信犯だろうね。

ジョシュが忍び込む時に、
なぜ宿舎と神聖な建物?がこんな近い?
って思ったけど、

クリスのアンアンと、ダニーの嘆きを、
互いに聞かせる都合ゆえっぽい。


今作は何エンドなのかで言えば、

不安定な恋人関係や、
亡くなった家族に囚われるより、
過ごしやすい所で仕切り直そうって所から、

ヤバい女の子の、
宗教依存エンドでしょうか。

正直、クリスが少し可哀想と思いました。

ディレクターズカット版では、
クリスの人物像として、
楽して得をしようとする面が分かるらしく、

ズルかったり受け身すぎる節は、
人としてどうかなと思うのですが、

誕生日や記念日を忘れていたり、
大事にされていないという点に関しては、

(一番露骨だったのは、
 コニーがいなくなった時の質問に対する、
 相手にしてなささかな?)

そもそも彼女が魅力的だったら、
そうはならないのでは?と。

パニックを起こしがちと序盤で自白しており、
情緒不安定に依存体質と、

クリスがうんざりし始めた原因は、
ダニーにあるとしか。。

(パニック等を起こし始めた原因が、
 クリスであれば、話は変わりますが。)

クリスは酒場で、
「別れると後悔するかも」と言っていたり、
周りに茶化されても電話に出て話を聞いたり、

村でもダメながら、
関係の維持には努めようとしており、

(足りてない部分もあったかと思うが、
 序盤で触れられていたように、
 日々うんざりさせられていたら、
 あんな感じにもなるかと。)

まして、不貞セックスに関しては、
薬漬けで判断能力も無い状態でさせられているわけで、、

(最後の食卓で、屈んで立てず、
 自身の異常に不審になってた様子から、
 精力剤も混ぜられていたと取れ、
 行為中も目がガン開きで、どう見ても異常。)

監督曰く、クリスの印象の作り方は、
ダニー視点からで映しているらしく、

(逆にダニーのダメな部分は、
 最初の精神安定剤から察するくらいしか、
 材料となるものが映されておらず、
 意図的に隠されている。

 睡眠薬も普通なら、
 時差ボケや白夜の明るさからと捉えるが、
 作品的に不眠症からかと。)

印象ではなく事実から見るに、
クリスがそこまで悪とは思えない。

それに、クリスの心象を、
察した上で付き合う選択をしているダニーに、
責める権利はないのでは?と。

束縛されてる訳でもなければ、
不服を伝えることもせず。

少なくとも、死を受け入れてる村人よりも、
優先して殺すのはいかがなものかと。

なので僕には、
ヤバい女の子だったなという印象です。


とまぁ様々な要素が、
含まれに含まれていた今作ですが、

やはり僕としては、面白くはなかったなと。

最後、
クリスが選ばれていなかったと思わせておいて、
やっぱり選ばれていたっていうのは、
かなり好みな演出でしたが、

全体的に伏線が分かりにくく、
イラストにまとめすぎだったり、

ルーン文字や絵画など、
難解すぎる引用が、
画角に収められすぎて露骨だったりで、

変に、気を散らされ続けたのが、
かなりマイナスでした。

これだけ調べ倒してても、
すげぇ!!とか、面白い!!
って感情があまり湧かないんですよね。

やはり、
表面が面白くなかったのが致命的だったと、
思わざるを得ない。

もっとシンプルな映画を観たいと、
思うに至った一作でした。


p.s.1

そもそもスウェーデンは、
国民一人一人に認識番号を与えられており、
民族文化といえど、
人が亡くなれば、捜査対象になるのでは?

まして、
アメリカ人という他国の学生が、
姿を消したとなれば、
それこそ問題になるような。。

(旅行届けなのか、
 留学届けなのか分からないが、
 残留期限はあるはずで、
 まして院生となると、
 確実に調査されるはず。)


ホルガという村は実在し、
毎年ミッドサマーという催しを、
開催しているらしい。

埋まっていた足は、ジョシュの足で、
足裏のルーン文字は、協力などの意味。
盗撮した事から、協力しない者、
裏切り者的な意味が充てがわれている?


オズの魔法使いがモチーフに使われており、

・家に帰りたいドロシー
  →安心したいダニー
・臆病ライオン
  →クリス
・脳なしカカシ
  →マーク
・心ないブリキの木こり
  →規律なら死んでも気にしないジョシュ

村にたどり着くまでの道も、
黄色の花が咲いており、
黄色のレンガ道のオマージュかと。

(もはや花の上を歩いているので、
 明らかに意図がある)


拍手しそうな場面で、
村人らが手をゆらゆらしていたのは、

クリスが食卓で、
隣のおじさんに事情を聞こうとした時、
猫騙し的に目の前で手を叩かれ、
ふらついたことから、

村人らは飲み物により、
日常的に薬漬け状態になっており、
破裂音に弱いという推察もあり。


少数民族の地を求めたアメリカの若者が、
村ではマイノリティとなり、

マジョリティのルールに淘汰される、
という構図から、
移民に対するテーマ等も含まれてそう。

調べてみると、スウェーデンは、
移民受け入れ政策のしすぎで、
国が不安定になり問題化しているそうな。

前半の車移動で、
上下反転する演出のところの幕に、
「大量移民を禁止しよう」と、
書かれていたみたい。


p.s.2 (21/10/28)

18歳で外に出て、世界に触れたら、
村がおかしいと理解するんじゃない?
変な挙動が不意に出ないの?

等のレビューがいくつかあり、
確かに。と思い、考えてみた。

宗教にハマってっちゃう人って、
どんな人だっけ?って考えたけど、

大抵は、元々普通の人であって、
弱ってるとこを突かれるから依存しちゃってて、

逆に、宗教ガチな人は、
一般常識も理解して上手くやってるから、
(ペレみたいに)ボロも出ないのかなと。

(“え、あいつ普通そうなのに宗教やってんの?“
 って、割とイメージしやすくないですか?)

プラス、ダニーの家族を殺した村人のような、
工作部隊があるとして、
18歳で外に出た後は、監視されてて、
ボロ出してたら、背徳って事で殺されるとか?

もしくは、
シンプルに薬物で洗脳ですかね。

クリスは最後、
「黙ってなさい」って言われ、
喋れなくなっていたようですし、

日頃からドラッグ漬けの民族なので、
外の世界の醜さと、村の平和さを天秤に、

村の行動が正しいが、
外ではバレないように振る舞え、的な。

教育も兼ねた洗脳なども、容易ではあるのかなと。
(大学に行く知能や学歴などの習得は謎だが。笑)
大野

大野