もやし

君の誕生日のもやしのレビュー・感想・評価

君の誕生日(2018年製作の映画)
4.7
本当にあり得ないぐらいちゃんと作ってあったし、人間誰もが向き合わなきゃいけないテーマなんだけど、なんかどこか一歩引いて見てしまう感じがあった。ちょっとやりすぎに感じた。



大規模な事故で息子を亡くしてしまった親とその周りの人々を描く。
父親は外国に単身赴任してたのとある事情があって息子が亡くなってしばらくして帰国。妻に会ってみると人が変わったように憔悴していて、いきなり離婚届を突き出される。


妻があらゆるものを全拒否してる状態を見せられるのがとにかく辛い。ずっと息子のことしか考えてない。目の前の生きてる娘のことより息子のこと。
そしてそんな態度を取られることで娘も次第に父親に懐いていくという展開も何とも言えない気持ちになる…

そんな母親がちょっとずつ心を整理していくのがこの映画のメインストーリーです。生半可じゃないけどね。

すごく入り組んだヒューマンストーリーになってます。




でもラストの関係者が集まって開く息子の誕生日会がちょっと俺には拒否反応が出てしまった。もちろんそういったものの偽善感みたいなものをちゃんと乗り越えつつの展開だから嘘っぽさとかはないんだけど、俺にはちょっと別の理由で無理だった。
それは、死んだ人間だけ美化しようとする人の思考について。

なんか生前結構厄介だった人も死んだ瞬間何だかんだで良い人だったよねみたいな話になるじゃんいつも葬式とかで。あれが昔から嫌で嫌で。

お前に人の心はあるのか!って思われてそうだけど…笑 でもこれ俺自身に当てはめて考えることがよくあって。
今俺30越えて実家暮らしで、まあ完全に親の助けなしでは生活できない状態なんですけど、それとは別に自分10代に鬱病になってから自殺何度も考えたことあって、そのとき本当に自殺してたらどうなってたのかなって。
たぶん10代とかに死んだらなんかたぶんすっげえ美化されてたと思うのね。可哀想だとかあの子は真面目すぎたんだとか。
でも実際は今生きてて世間からすればただの子供部屋おじさんで。正直親以外からしたらほんとどうでもいい存在だと思うのね。
俺は自殺を踏みとどまって一生懸命生き残ったのに、世間からすればゴミ同然で。
その一方で死んだ人は何故か美化されて。
たぶん今の俺でも死んだらそれなりに美化されると思うのね。それでよく知らない親戚が、優しい奴だった、根は良い奴だったとか何とか言って。
そういうのって、正直やってらんないよね…笑

ちょっと二つの意味合いになってしまうけど、死んだ人間が生きてる人間に勝っちゃいけないと思うんだよね。
この世は生きてる人のためにあるべきだと思う。

もちろんそれと遺族の悲しみは別だよ? 遺族の悲しみは絶対に否定しないけどさ。

この誕生日会も少しでも遺族の方の心の整理に繋がればっていうことで開かれてるのもわかるんだけど、こういう表現の方法で心の整理ができちゃうんだとしたら、人間って本当に嘘っぽい生き物だなと思う。

まだ本当に近しい人を亡くしてない俺が言っても何の説得力もないんだけどね。
どんなに目の前のことを大事にしようと思っても、もう取り返しのつかないことに囚われてしまうのは人間の性だもんね。こんなこと言ってる俺が嘘っぽいのかもしれん。
もやし

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