ひでやん

太陽の家のひでやんのレビュー・感想・評価

太陽の家(2019年製作の映画)
3.0
半端な優しさはお節介となり、徹底した優しさは感謝となる。

『英二』以来20年ぶりとなる長渕剛の映画主演作だったので、大の剛ファンである自分は大喜びだった。しかし、期待よりも不安の方が大きくなり、なかなか手が出せずにいた。ヤクザに医者に坊主と、やんちゃな役で暴れまくった剛兄さんが大工の棟梁を演じるって事で期待に胸を膨らませたのだが、なんか怖くてね。丸くなった剛兄さんはあんまり見たくないという気持ちと、駄作のニオイがプンプンプンだったので…。

カンナで木材を削るオープニングがカッコイイ。そして長渕剛の登場シーンがやんちゃでホッとした。広末涼子が現れてからは、なんでそうなるんだ?と序盤から有り得ない展開に。初対面の男をアパートに連れ込むシングルマザーと、遠慮なく部屋に入ってカレーを食う男。出会いが強引でリアリティがないが、コップの水でスプーンを洗う場面にニヤリ。「どんなバイ菌が付いてるかわかんないだろ」とコップの水でスプーンを洗い、その水を飲んじゃうドラマ『とんぼ』を思い出した。

広末の息子を「鍛えてやる」と言う棟梁のお節介と、息子を預かってと言う広末の厚かましさ。ボヨヨンと遊び、大樹の音を聞き、太陽や風を感じる穏やかな時間。猫を膝に乗せて縁側で茶をすするような時間が淡々と過ぎていく。昼はカンナで木を削り、夜は娘のカンナに心を削られる。そして瑛太に怒鳴られ、妻からビンタ。まあ、そうなるわな。人情深いというより、お人好しのおバカさんだもん。で、「メイちゃんと龍生の家を建てる」って、あちゃあ、とんでもねえ事言っちゃったよ。

女好きは俺らの悪い癖〜でも遊びなんかじゃないから家建てる〜♪機嫌直して〜カンナ。帰ってこいよ、俺らの家まで〜♪この脚本に出演者の誰もツッコまなかったんだろうか…。筋トレシーンは剛ファンじゃない人は首を傾げるだろうな。川崎家の温もりのある照明や雰囲気は良かった。

若かりし頃の剛兄さんと比べると演技力に深みを感じたんだけど、正直言って瑛太に全部持っていかれた。もういっその事広末親子をバッサリカットし、川崎家を主軸に描いて、瑛太にネックレスをあげる方が良かった。

「家族」という船に乗り
「他人」という子供を乗せて
「太陽」という船を造り
今「親父」という魚になった
ひでやん

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