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パラサイト 半地下の家族のHicKのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.4
《醜と美。ギャップで繋がる貧困富裕》

【醜と美】
全体を通して、「泥臭い物語」と全体に流れる「上品なクラシック調楽曲」のギャップに演出上の皮肉・ブラックユーモアを感じ、かなり印象的な作風だった。立ちションをされる場面では美しい楽曲を背景にスロー演出。終始、美ではない場面を美に持っていく。汚さと美しさのギャップは、可笑しさの中にほんの少しの切なさも感じる気がした。

【前半】
富豪の家に寄生していく過程はとても面白く、1人また1人とメンバーが揃っていく展開にワクワクした。パク夫人の描写には富裕層に対する皮肉が詰め込まれていて楽しい。そして今作最大のツイストである"「半地下」よりも下層の存在"には驚かされた。

【後半】
*ボヤッとネタバレ気味かも
そこから死闘が始まるわけだが、正直、テーマへのアプローチは個人的に期待していたものとは違った。寄生者同士の「同族間」の戦いではなく、もっと格差に関する貧困富裕の「異種族間」の戦いが見たかった。彼らがリスクを冒してまで「生きる事」よりも「排除する事」を優先した事に納得がしづらい。両者の目的が同じなら「敵対し、争う醜さ」よりも「共に卑怯な手で巧妙に生きる醜さ」の方が自分の好みだった。

ただ、好みや期待が違っただけで、もちろんツイストによる面白さはあった。硬派なテーマ性にこのとんでもないエンタメ要素をもってきたからこそ、更に評価されているという事もかなり納得する。前半と後半でガラッと変わる雰囲気は、「醜と美」を扱う今作に相応しいギャップ。

【クライマックス】
お見事でした。

【演技】
家政婦役のイ・ジョンウンが素敵だった。「焼肉ドラゴン」を見たときに彼女の温かさ、親近感、少しコメディーチックな演技が好きになった。今作も家政婦のムングァン役として程よいコメディー色を入れながら好演していたと思う。また好きになった。

【映像美】
良い質感。場面によってガラッと撮り方を変え画面構図を工夫するなどフォトジェニックさも感じた。世の中の映画監督それぞれに独自の美的センスはあれど、ジュノ監督は多くの観客にしっかり「美」だと認識させる分かりやすさも追求してるのかも。画面を通して自身を売り出すのがうまい監督という印象も受けた。また、半地下の街はセットだそうで、そのリアル感に脱帽。

【総括】
醜さと優雅さ、汚さと美しさ、前半と後半。貧困層と富裕層を表したかのように、テーマやテイスト、音楽、演出の全てにギャップを作っていたのがとても印象的で効果的だった。それによって際立つブラックコメディー色も良い。社会問題をテーマを掲げながら、エンタメ作品として高揚感・緊張感も与えてくれる珍しい作品。

チャパグリってチャジャンミョンと同じ味?食いたくなる。辛いのが食えない自分にはチヂミとチャジャンミョンが好き。焼酎も。
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