みーちゃん

あなたの名前を呼べたならのみーちゃんのレビュー・感想・評価

あなたの名前を呼べたなら(2018年製作の映画)
4.2
静かだけど、自分の中に、信じられる何かが残る、とても素敵なインドの作品だった。(フランスとの合作)

あらすじ欄だけ読むと、メイドと御曹司の身分違いの悲恋や、御伽噺を想像してしまうけれど、そんな陳腐な展開じゃない!二人の姿を通して、ロヘナ・ゲラ監督の、社会や個人に対する、ぶれないメッセージが伝わってくる。

私が好きなのは、そのメッセージの伝え方。シンプルなラブストーリーという形を借りて、居丈高にも深刻にもなり過ぎず、かと言ってエンタメにも寄り過ぎない。観客として、ラトナとアシュヴィンの誠実さに好感を持ち、共感する事によって、さり気なく、でも、しっかりとバトンを渡されたような気持ちになる。

セリフや説明が少ないのも良い。その代わり、磨き上げられた脚本とカメラワークによって、二人のバックグラウンドや心情、距離をリアルに感じることができる。

これには、ラトナが、毎日身に着けるサリーの描写も大きく貢献していると思う。

一見、滅茶苦茶なコーディネートになりそうな、大きなチェックと花柄、鮮やかなブルーとピンク、異素材の縁取りなど、頭の中で考えただけでは思いつかないような、大胆な組み合わせとバリエーション。とても美しく、楽しい。伝統的な衣装でありながら、ラトナの個性を力強く、且つ、自然体で引き出す、象徴的なアイテムだった。