サヨ

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊のサヨのレビュー・感想・評価

4.1

ずっと公開を楽しみにしていた作品。

雑誌の編集長が心臓発作で亡くなり、遺言に残された”フレンチディスパッチ”の廃刊が決まる。廃刊のため最後にして編集長への追悼号。エディターたちは最後の”フレンチディスパッチ”で何を話題に取り上げ、記事にするのか。
大まかな記事について、エディターたちがそれぞれの物語のストーリーテラーになって展開していく。それぞれの編集者たちと編集長との関係性が垣間見れてなんだかソワソワする。良い意味で。

ウェスアンダーソンの独特の視覚的な美しさは絶妙な色味やカメラワークやセットであったりすると思うのですが、今回は白黒のシーンが多いからこそカメラワークに注目がいく。兵役中の少年たちが夢を語り合うシーンのカメラワーク、最高に痺れたな。主要な三部のストーリー展開の中では、いちばん最後の料理人のお話が好きでした。展開やアニメーションはもちろん、この記事の編集者であるローバックと編集長との掛け合いから編集長の人となりがわかるシーンも含めて1番印象的だったかも。編集長、愛と博識のある人だ。

最初は情報が多く次々と進んでいくので、一度の鑑賞ですべてを拾い切るのを諦めた途端にゆるりと楽しむことができました。映画館でこの映画を見ると自分の意思で気になったシーンを止めて巻き戻しすることはできないけれど、でも雑誌とはいらない情報や興味もないものも載っているものと書いている人がいらっしゃって仰る通りだなと感心。この映画も大雑把にゆったりとした気持ちで見るべきなのでしょう。

ウェスが雑誌ニューヨーカーを愛しこの映画を作ったように、雑誌という色んなジャンルのものが大雑把に細かく載っている記事を集めて作られていること自体を敬愛していることが伝わってきた。映画としてウェスがそれぞれの記事を短編集のように落とし込んだ作品。今度は家で見よう。
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