サヨ

燃ゆる女の肖像のサヨのレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
3.7
女性の画家が描いた一枚の絵(燃ゆる女の肖像)に関する回想と、ままならない2人のその後と。

思わず見入ったさみしくて、美しい映画。劇中で引用されているセリフや音楽にはすべて意味があり、無駄がないのに繊細で最後のオペラのシーンで流れていた音楽が奇しくも、マリアンヌがはじめてエロイーズに心を覗かせたオルガンで弾いた曲で、雷や雨のように激情のような恋、でも堪え切らなければならないエロイーズの気持ちが伝わってくる。

冒頭と絵を描き終えたその日の終盤まで、この映画では男性の存在が確かに匂わされるものの映画には実際に登場しない。
エロイーズがこれからミラノで結婚する予定の相手、マリアンヌの死んだ画家の父、侍女とおそらく恋仲にあった存在の男、存在自体は登場するものの、具体的なキャラ付けや人物を登場させないことで当時の女性を囲む社会的な地位についての弱さであったり、子供を育てるという選択肢の無さが当時の状況や制度、女性の負担の大きさを感じられた。
だからこそ対比として完成の日の朝、台所にいる男性を見てエロイーズの母が帰ってきたことをハッと自覚するマリアンヌであったり。

女性ってなんでこんなにめんどくさくて美しい生き物なんだろう、と改めて思えた作品でした。振り返りたいけれど、それでも振り返らない美しさ。物語の終わりが作品の余韻として美しくて好きです。
サヨ

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