このレビューはネタバレを含みます
この時代、この国での思想や男女の社会的待遇の差がいかに虚栄で愚かであったかは、あの聖水大橋とその結末がメタファーとして上手く機能していた。
あの橋の崩落で無事だったお姉さんは、自身の無事を喜ぶこともせず、かといって安堵しているようでもなく、何故か泣いている。暗い食卓。
事故そのものがショックだったのか?と思ったけれど、少し考えて気付く。
そうか、犠牲者の中には友人らもいたのか。
この場面だけでも、自分の思慮の浅さを痛感する。
説明の無い、顔や行間でみせるシーンが多く、節々で"察すること"を試されているような気がした。
相手の気持ちを理解することは難しい。
自分の気持ちを表現することも同様に。
それができないから、暴言や暴力や無神経や無関心へ形を変える。
それは大人になっても変わらず、生きていく限り続く永遠の課題でもあるけれど、せめて子どもには、寄り添ってあげる大人が近くにいて欲しいと切に願う。
ウニにはあの先生がいて良かった。(病院の先生も、良かったなぁ)
あの手紙に書かれていた言葉ひとつひとつを浴びることで、視界を覆っていた膜が破られ、少しだけど確実に世界が違って見えたような、あのラストカットのウニの表情に救われた。