たく

8番目の男のたくのレビュー・感想・評価

8番目の男(2018年製作の映画)
3.6

2008年に行われた韓国初となる国民参与裁判の顛末を描いてて、実話が基とはいえかなり脚色が入ってるように思った。民間の陪審員と法の執行者である裁判官の認識のギャップが、人が人を裁くことの難しさを浮き彫りにしてて、果たして有罪なのか無罪なのか最後まで分からないところは手に汗握った。最初は有罪一色だった陪審員の意見を一人の人物が覆していくというプロットは「12人の怒れる男」を思わせる。故意の殺人かどうかを争う話は「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」の第1話に似てて、もしかして同作はこちらを参考にしたのかも。

韓国初の国民参与裁判の陪審員として8名の民間人が選ばれることになり、その8番目として選ばれたクォン・ナムは法律に対する認識が甘く、質問に対する答えに窮するところに優柔不断さが垣間見える。この優柔不断さが後半に効いてくる筋書きが上手いと思った。彼らが担当する裁判は、本人の自白と状況証拠が全て揃ってる有罪ありきの殺人事件で、あとは量刑を決めるだけというもの。偶然の重なりから事件の容疑者とばったり出くわしたクォン・ナムが、容疑者の有罪を疑っていくところが出来過ぎな感じで、ここはかなり脚色っぽかったね。

クォン・ナムが結論を急がずに踏みとどまるところで、実は序盤で見せた優柔不断さは思慮深さであり、自分の納得いかないことに対して安易に答えを出さないという芯の通った人間だったことが分かるんだよね。彼の粘りのせいで討議が長引き、徹夜になるのがちょっと驚いたんだけど、こういう場合はいったん休廷にするものじゃないのかな?容疑者がしっかりしたコミュニケーションの取れない人で、彼が自分の言葉で喋るのが最初の自白を覆すシーンの他に一度もないのが引っ掛かった。彼の弁明があれば、陪審員の討議がもっとスムースに進んだんじゃないかと思う。終盤の論告直前の陪審員の最終討議がスリリングかつ泣けて、裁判長がクォン・ナムとの最初の面談で言った「法は人を罰しないためにある」という言葉が裁判長自身に返ってくるところはジーンと来た。
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