【目は口ほどにものをいふ】
目は言葉よりもより多くを語る。
主人公の女性画家マリアンヌの目は、大きく、鋭く、そして一片の曇りもない。
対して、修道院帰りの貴族の娘エロイーズの目は、頑なではあるが、少し泳ぎがちであり、気持ちの揺らぎを所々に感じさせる。
マリアンヌの見開かれた大きな瞳は、鏡のようでもあり、また、井戸のようでもある。
エロイーズに、否応なしに彼女の本当の部分を映し出しまた、感情の深淵へと引きずり込む。
エロイーズは心に揺らぎがあるので、マリアンヌの視線に抗うことは出来ない。
修道院帰りで男を知らない、或いは嫌悪しているエロイーズは、己の真実に従うしか術がない。
17世紀のフランスの孤島を舞台とした、女性たちの人間模様が描かれるこの作品。
冒頭のシーンで、マリアンヌのキャラクターを印象付けられる。
しかし、全般的に静寂であり、あらゆるシーンが美しい。
正体を隠しているマリアンヌと、気持ちを閉ざしているエロイーズなので、言葉は多いが、何処かしら空虚である。
また、2人の感情の琴線に触れるシーンでは、音楽が効果的に使用され、呪術的な世界を演出している。
「燃える女」のシーンでは、女性たちが一斉に歌い出す。
しかし、このシーンでのエロイーズの目には、哀しみと諦観が観て取れる。
また、最後のシーンでは、音楽が一番の大音量となり、その最中、マリアンヌがエロイーズを見るが、、、。
視線や表情のとても繊細な表現で、登場人物を描いている。
これは女性的な細やかさのなせる業であろう。
最近、世間は色々と五月蝿いが、女性だからこそ優れているものは、確かにあるのだ。
目は口ほどにものをいふ。
恐れ入りました。