やまモン

燃ゆる女の肖像のやまモンのレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
4.2
【目は口ほどにものをいふ】

目は言葉よりもより多くを語る。

主人公の女性画家マリアンヌの目は、大きく、鋭く、そして一片の曇りもない。

対して、修道院帰りの貴族の娘エロイーズの目は、頑なではあるが、少し泳ぎがちであり、気持ちの揺らぎを所々に感じさせる。

マリアンヌの見開かれた大きな瞳は、鏡のようでもあり、また、井戸のようでもある。

エロイーズに、否応なしに彼女の本当の部分を映し出しまた、感情の深淵へと引きずり込む。

エロイーズは心に揺らぎがあるので、マリアンヌの視線に抗うことは出来ない。

修道院帰りで男を知らない、或いは嫌悪しているエロイーズは、己の真実に従うしか術がない。

17世紀のフランスの孤島を舞台とした、女性たちの人間模様が描かれるこの作品。

冒頭のシーンで、マリアンヌのキャラクターを印象付けられる。

しかし、全般的に静寂であり、あらゆるシーンが美しい。

正体を隠しているマリアンヌと、気持ちを閉ざしているエロイーズなので、言葉は多いが、何処かしら空虚である。

また、2人の感情の琴線に触れるシーンでは、音楽が効果的に使用され、呪術的な世界を演出している。

「燃える女」のシーンでは、女性たちが一斉に歌い出す。

しかし、このシーンでのエロイーズの目には、哀しみと諦観が観て取れる。

また、最後のシーンでは、音楽が一番の大音量となり、その最中、マリアンヌがエロイーズを見るが、、、。

視線や表情のとても繊細な表現で、登場人物を描いている。

これは女性的な細やかさのなせる業であろう。

最近、世間は色々と五月蝿いが、女性だからこそ優れているものは、確かにあるのだ。

目は口ほどにものをいふ。 

恐れ入りました。