nori8

燃ゆる女の肖像のnori8のレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
4.0
外界を知らず心を閉ざす
箱入り娘のエロイーズ。

身分を偽る画家マリアンヌと
孤島で対峙する一挙一動、
その息遣いと緊張感で
前半は心がピーンと張り詰める。

絵画を描くことを通じて
自身のトラウマと向き合い
互いの心と無言の会話を続ける。

モデルとして画壇に上がる度に
少しずつ変わりゆく表情と所作を
実に繊細に描いている。

静から動へ…にわかに情熱的に
掻き立てる祭りの歌。
炎の向こうに揺らぐ2人の表情が
見終わった後も脳裏に焼き付いて
離れない…。

被写体をじっと観察し
筆を走らせることで
自らの心も解放していく
まるで、写し鏡のような2人。

やがて、愛し合う必然。
はかなくも美しく壊れそうで
思わず手を差し伸べたくなる。

宿命的な別れのシーン。
相手を思いすぎるあまりの衝動…
“振り返る美学”がおとぎ話の
ように残酷に心に刺さる。

炎、光、影…
美しくもはかない残像が
心を温かくしてくれる。
そして、長回しのラストシーン。
何とも余韻が心地よい。

カンヌを唸らせたのも納得…
もう一度、劇場で味わいたいと
思わせる名作だ。
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