欧州で最多のテロ発生国フランス。本作で描かれるのは、今を生きる悲惨な人々(Les Misérables)。その現実をドキュメンタリーのようなタッチでヒリヒリと突き付けてくる。
パリには何度も訪れて、今ではパリにいる黒人にすっかりなれたが、初めて訪れたときは黒人の多さに恐怖を感じていたのを思い出した。
エムバペは彼らの希望であり、”司教”でもあるのかもしれないとも考えたが、どうやら違う。サッカーというツールで這い上がったにすぎない。
そして、国家の治安安全維持装置としての顔をもつW杯での優勝は、”銀の燭台”になり得ない。そこには刹那的融和しかない。
しかし、希望はあることを小説『レ・ミゼラブル』が教えてくれる。ミリエル司教がいれば、この悲惨な人々もジャン・バルジャンになれるのではないか。正しい人になれないと決めつけてはいけない。きっと正しい人になれる。
“友よ、よく覚えておけ
悪い草も悪い人間もいない
育てる者が悪いだけだ”