Kachi

エターナルズのKachiのレビュー・感想・評価

エターナルズ(2021年製作の映画)
4.5
【壮大な物語のはじまり】

IMAXにて鑑賞。10人も新キャラが出るため、覚えられるのかと思ったが杞憂だった。5000年という長きにわたる壮大な話を違和感なく表現した構想力はさすがだと言わざるをえない。
古代メソポタミア文明から始まり、イラクやメソアメリカ(テノチティトラン)、インド(グプタ朝)など多くの文明が現れるため、世界の歴史が好きな人は、スケールの大きさをより強く感じられると思う。

原作コミックは、マーベルの中ではかなりマイナーな位置付けらしい。超人的な力はこれまでのマーベルキャラクター達の比ではないが、設定にもある通り「人間の抗争には介入せず」、ディヴィアンズからの攻勢に対してのみ人間を守るため、いわば影の存在であるからだ。そして、この設定の妙が、サノス亡き後のマーベル世界と接点を持たせる流れへとつながっていく。

作品全体を通して、人間の進歩に対する善し悪しが語られる。人間は不便であるがゆえに、さまざまなものを発明し豊かになっていった。他方で、そのような科学の発展の帰結の一端には原子力爆弾によるヒロシマ・ナガサキがある。まさか、エターナルズで広島のシーンが描かれるなどとは思いもよらなかった。

また、人口増加の果てに地球が滅亡するという設定も、今っぽい感じがした。もっとも、受け手によっては少し説教的なプロットだと感じだかもしれない。

冒頭述べた10人のエターナルズのパーソナリティも個性豊かで見どころの一つだ。とりわけ、神話の世界から取ったであろうキャラクター達の名称は、やはりそうなるかと思わせる着地に至り(ギルガメシュとイカロス)、そうかと思えば同性愛者や聴覚障害者もいる。伝統と多様性の両方に目配せをしたキャラ設定は、現代社会を合わせ鏡のように映し出していた。

小ネタでの笑いはもちろん、その後を予感させる終わらせ方も見事だった。早くも次回が楽しみなシリーズとなりそうだ。
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