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エターナルズのeucalypsoのレビュー・感想・評価

エターナルズ(2021年製作の映画)
2.5
コスプレ上等なエターナルズが武器や衣装にまとう幾何学文様は美しく、エンドロールで世界各地の遺物と交わるのも新鮮。

CGIクリーチャー、ディヴィアンツは、WETAがVFX担当のせいか見た目や動きがロード・オブ・ザ・リングっぽい既視感。

セレスティアルズは、原作のジャック・カービーの絵柄に準じてると思われる昭和のロボ風味。

これら三者三様の神々のデザインがリアルで雄大な風景とあまり馴染んでないというか、浮いてるというか、ミスマッチ感が最後まで拭えず(そこが良いという意見もあると思う)。クロエ・ジャオ監督、あまりSFのデザイン方面には関心がないのでわと推測。

ストーリーは数千年単位の神話サイズなのに、ヒューマン・スケールの内輪揉めや痴話喧嘩がチマチマと続き、もともとMCUの戦隊モノな群像劇が得意ではない自分はアウェー。

人類の存亡ウンヌンという話なのに、人間側がほとんど描かれないのも片手落ち。セルマの恋人(彼女が神だと知って葛藤するってとても魅力的な題材なのにスルー)、ファストスの恋人、キンゴの付き人くらいしか近しい人間は出てこないし、ストーリーには関わらない。

そもそもエターナルズたちに神がかった属性を付与しようとしてないというか。でないと、下町の顔役ことマ・ドンソクの起用が謎だし、主人公のセルマ=ジェンマ・チェンもその辺にいそうな親しみやすい美人で、不安や戸惑いをストレートに映し出す表情がよき。

情緒不安定気味に画面を制するアンジェリーナ・ジョリーの異物感だけは圧倒的に神っぽくて、不敵な憎まれっ子バリー・コーガンも含め、これだけ凸凹なルックスを揃えたことがヒーロー映画としては異端だと思う(サメ人間がクルーの「スーサイド・スクワッド」には負けるが)。

保守的なマッチョのイカリス=リチャード・マッデンは自らの罪を贖うためにイカルスの神話まんまに退場し(マ・ドンソクもいなくなり、男性性は消え去る)、セルマによる癒やしの力めいた物質変容能力がセレスティアルズの「出現」を封じ込める、というのは図式的ではあるが、今時のダイバーシティだなぁと。

一件落着後にセレスティアルの親分にお仕置きを食らい、宇宙にヒュンと飛ばされるセルマ、というあまりに尻切れトンボな結末、その後の展開も蛇足そのもので酷い。何より、何度も記憶を持たずに生き返るというエターナルズの生の儚さが感じられない。

結局、作家性の強い大人味のマーベル映画というコチラの期待値が高すぎたのだろう。じゃあクリストファー・ノーランやドゥニ・ヴィルヌーヴがMCUを撮ればそれっぽくなるのか?と言われるとよくわからないんだけど。

オマケ。

たまたま最近、Esad Ribicという絵がかなり好みのアメコミ画家を知った。彼の手によるエターナルズの最新コミック(映画版とは別のオリジナル)では、エターナルズの敵はサノス、セレスティアルズもディヴィアンツもより人間に近いルックスで、イカリスとスプライトはニューヨークの少年と関わる。映画よりオーソドックスかも。

アメコミ・ヒーロー物はコミックだと長丁場の仲間割れ話でも気にならない。映画とタイム感が違うからなのか何なのか。
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