eucalypso

ヘルボーイ/ゴールデン・アーミーのeucalypsoのレビュー・感想・評価

4.0
赤鬼クルーが人外魔境マンハッタンで百鬼夜行クルーズ。再見。

「ロード・オブ・ザ・リング」から一部着想を得たファンタジー寄りの作風だが(ピーター・ジャクソンが頼んだ「ホビット」の監督をギレルモ・デル・トロは辞退してる)、定石はお構いなしのやりたい放題。彼の作品中、最もバラエティに富む人外ラブがむせ返り、「帝国の逆襲」や「ダークナイト」と同じく、設定紹介をすっ飛ばせる2作目ならでわのワンダーに快哉。

堅物で左脳派のエクトプラズム化したガス人間、ヨハン・クラウスを筆頭に、ヌアダ王子に付き添うカバっぽいトロール、人間を食うティース・イーター(グロいのは意外にここだけ)、気弱そうなエルフの侍従長、カナリアが弱点の猫食いの老婆、トロール市場の魑魅魍魎たち、ヌアラ姫に地図を渡すアジア系人外(「ファントム・メナス」のヌート・ガンレイ似)、巨大植物モンスター(「もののけ姫」のダイダラボッチ)、足がない鍛治職人のゴブリン、岩石巨人(「ホルスの大冒険」)、超合金変形ロボなゴールデン・アーミー(「ゴールドライタン」)。人外以外も、王冠や歯車や眼鏡などスチームパンクな意匠が持ち込まれた、ファニーでアナクロな造形美の百花繚乱は眼福。

人間側がヘルボーイをフリークスだと怖れたり、ヌアダ王子が植物モンスターを「彼は一族の最後の1人、俺もお前も同じ」とヘルボーイに人間界と人外界の分断を唱えたり、死の天使が「ヘルボーイは世界を破滅させる運命」と告げたり、深掘りできそうなドラマの種は巻かれているが、そこはスルー。最後まで、ヘルボーイとリズの痴話喧嘩を基調に軽いタッチで進む。

ヘルボーイの育ての親として登場する「エレファントマン」ことジョン・ハート以外、キャラが立った人間がいないのもややバランスを欠く。その分、涙袋なのかクマなのかタレ目の目ジカラが半端ないセルマ・ブレアの一人勝ち。

「ヘルボーイ3」は頓挫、リブートにデル・トロは関与しないとのことで残念。その代わり、パントマイムのような優美な身のこなしで魅了するエイブから「シェイプ・オブ・ウォーター」が10年越しに生まれることに(演じるダグ・ジョーンズは、アンディ・サーキスと並ぶ影武者系俳優)。

「パンズ・ラビリンス」の2年後に肩の力を抜いて作った本作は、脂が乗ったデル・トロの外連味あふれるクリーチャー創作ノート、人外図鑑で、ひたすら楽しい。
eucalypso

eucalypso