翼

プライベート・ライアンの翼のレビュー・感想・評価

プライベート・ライアン(1998年製作の映画)
4.1
命の数。
1人を救う為に何人もの兵士が命を落とす。
1人の敵兵を殺す度、何名も何十名もの自国民の命を守ったと考えるようにしている。
命の価値が究極に軽んじられる戦場に立つ兵士たちは、命さえ足し算引き算でしか自己を律することが出来ない、という表現として解釈している。
「4兄弟のうち3人が戦死した為、最後の1人を生還させる作戦」を任命される心理とは如何なものか。米軍の一見美談に見えるこの指示を完遂する兵たちの複雑な心理と、その機微を無視し蹂躙する遥かに過酷な戦場の混乱。隊員たちはこの無益な戦争の拠り所として、せめてライアン二等兵が救うに値する人格の持ち主であることに縋る。

ノルマンディー上陸作戦の描写は思わず息を呑む。海岸線には死体が積まれ、文字通り海が赤く血に染まり、それでも銃弾の雨の中に飛び込んでいかなくてはならない切迫感。
翼