にーやん

鉄道運転士の花束のにーやんのレビュー・感想・評価

鉄道運転士の花束(2016年製作の映画)
4.2
線路は幸せを運んでくる…ごくたまに。


気難しく頑固な老運転士イリアと線路上で出会った少年シーマ。とても奇抜な切り口で綴られてゆく父と息子と 鉄道運転士 たちの物語。

このシュールでブラックな 倫理観 は日本人には違和感、不謹慎にもみえてしまう。それでも、後味が ほっこり で悪くはないという…とても不思議で奇妙な味わい。


線路と列車は人生の比喩。
避けることができない苦しみ、恐怖と不安、後悔と喪失の痛み、容赦のない現実から受ける 心の傷 と折り合いをつけながらも、決して見栄えは良くないが 職務 を全うする運転士たちの姿。

このカラッとした『命』の扱い方を映画的ファタジーと捉えることさえできれば、実はとても味わい深い作品だということに気がつく。嘆息しながらもどこかホッと救われる…そんな不思議で奇妙で温かさのある物語。


少しだけネタバレあり〼。
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毎度の如く、予備知識ほぼゼロでの鑑賞。
まず過ったのはこの物語の正しい見方。国が違えば常識が非常識になってしまうこともあるということは承知しているつもりでも『運転士は人を轢くもの』これには正直 度肝 を抜かれました。正に目から鱗。てかなんじゃそりゃ…。

でもそれも含めて、実は脚本もよく出来ていてテンポ感も非常に心地良くてハラハラドキドキ…久しぶりに 不条理劇の秀作 に出会ったような感覚になりました。物語の上澄みから受ける辛辣なイメージよりも、人々の「愛情の深さ」『腹の括り方』がとても印象深く心に残ったこの作品、私は好きです。
にーやん

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